風を食べて生きるアート ーテオヤン・セン展の魅力に迫るー
この記事では、現在、山梨県立美術館で開催中(〜2021年6月22日まで)の特別展テオ・ヤンセン展の魅力について語っていきます。
「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」テオ・ヤンセン
オランダ生まれのテオ・ヤンセンは、「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とも称されるアーティストです。1990年より風の力で動く巨大な立体作品「ストランドビースト(砂浜の生命体)」の制作を始め、その作品は日本を含む世界各地で公開されています。
ストランドビーストとは
オランダの芸術家・物理学者であるテオ・ヤンセン氏が生み出した『ストランドビースト』。
ストランドビーストは、オランダ語で、ストランド=砂浜、ビースト=生命体 を意味します。彼らは、砂浜で風を受けて、命を宿し、動き始めます。そして、ビーストの名の通り、その姿や動きはまさに生き物のよう。
実は材料は身近な素材ばかり
生き物のような滑らかな動き、複雑な見た目をしているビーストたちですが、実は使われている素材は意外なものでした。
ビーストたちの体を主に占めるこの黄色いプラスチックチューブ。実はオランダではホームセンターなどで簡単に手に入る馴染みのある素材なのだ。このチューブ以外に使われている素材も、ペットボトルや結束バントなど、日本人の私たちの日常でもよく目にする素材ばかりです。
ストランドビースト誕生の背景
砂浜で生活しているストランドビースト。その誕生の背景には、地球温暖化の問題が関係していたのです。
ヤンセン氏は、自身が執筆した新聞のコラム「砂浜の放浪者」をきっかけにビーストを生み出しました。彼の出身地であるオランダでは、近年、海面上昇が問題視されています。そこで彼は、その新聞にビーストたちを砂浜に放ち、砂丘を作ることで、海岸線を守るという発想を打ち出しました。
ビーストたちに命を吹き込む「リ・アニメーション」
砂浜で風を受け、動いているビーストたち。
つまり、美術館などの砂浜を離れた場所では彼らは「命を宿していない」状態。しかし、開催中は毎日、動くストランドビーストが見られる『リ・アニメーション』が実施されています。
リ・アニメーションでは、機械の力で風が送り込まれ、ビーストたちに命が吹き込まれます。実際にストランドビーストが動く様子を見ながら、仕組みや機能を学ぶことができます。
また、実際にビーストを動かすことができる体験コーナーもありました。
是非、あなたの手でビーストに命を吹き込んでみてはいかがでしょう?
※リ・アニメーションは開催時間が決まっているため、観覧希望の方はご予約の際にご注意ください。
山梨県立美術館テオ・ヤンセン展
開催期間:2021年4月24日〜6月22日
開館時間:午前9時〜午後5時(入館は午後4時半まで)
観覧料:一般1000円、大学生500円、高校生以下無料(高校生は生徒手帳をご持参ください)
ご観覧には予約が必要です。詳しくは山梨県立美術館ホームページをご確認ください。
文・写真:早川奈菜(山梨県立大学国際政策学部3年)