心のフトン@紫翠アニ

人1 フトンがあるから眠くなるのか、眠くなるからフトンがあるのか
人2 布団に入ればそりゃあ眠くなるだろうけど……
人1 それは布団の話だろ?フトンの話をしているんだ
人2 うん布団の話だよね
人1 だから布団の話はしてないんだよ
人2 は?
人1 フトンってのは睡眠の本質だ
人2 眠る場所じゃなくて?
人1 それとは違うフトンのこと
人2 違うことはわかったけど、お前の言うふとんってのはなに?
人1 フトンってのは睡眠の本質だ。眠るときに心の中に生まれるんだよ
人2 それを人は睡眠欲と呼ぶんだと思うよ
人1 ノンノンノン。わかってないねぇ。睡眠欲ってのは所詮、睡眠がしたいという欲求なんだよ
人2 だからそれがフトンでしょ?
人1 ちがうんだなぁそれが。睡眠欲求であり睡魔でもあるその奥。根源。それが心のフトン
人2 根源は知らないけど、心のフトンと布団が別物なのはなんとなく
人1 そう!カタカナのフトンが睡眠の本質であるフトン。漢字の布団が現実でいつも見ている布団
人2 フトンと布団でわかるわけがねぇだろ
人1 いや伝わるかなぁって
人2 同じ音だから違いわかんねぇよ
人1 結果的には伝わった
人2 けどさ、心のフトンも現実の布団もふとんって呼ぶのおかしくない?
人1 おかしくないんだよそれが
人2 だって、同じ名前じゃん。偶然とかじゃすまされない
人1 心のフトンがあったから布団がふとんと呼ばれているんだよ
人2 心のフトンってのは無意識の中にあるんでしょ?
人1 そうだね
人2 だから抑制されてるはずのそれが出てくるのは変な気がしてて
人1 変じゃないんだよ。そもそも名付け親がいるんだ
人2 名付け親……
人1 名付け親ってのはあ……
人2 抑制されている無意識に入り込んだってことなのか!
人1 そういうこと!それが名付け親だったんだよ
人2 なーるほどねー
人1 だからその人は布団のことを布団と名付けられたんだよ。心の世界に近づけたってこと。自分の心の中に秘めているフトンあったからこそ布団が生まれたの
人2 心のフトンが先で布団が後なのか
人1 そうそう
人2 けど、心のフトンが睡眠の本質ってのがイマイチなぁ
人1 心のフトンがあるから眠くなるのか、眠くなるから心のフトンが生まれるのか。ここまでは理解できた?
人2 まあ、ぎりぎり?
人1 で、睡眠欲求であり睡魔であるその奥。それが心のフトン。それがつまり、心のフトンの解釈
人2 ??
人1 例えばぁ、ある意味、床で寝られる人はそこで心のフトンが生まれているんだよ。いやそれか、ずっと心のフトンを持っていたのかもしれないしね
人2 そこで布団を感じている…?
人1 そう!布団がそこになくても心のフトンがあるから寝られるんだよ
人2 床が布団なわけじゃないんだ
人1 そうなんだよ
人2 心のフトンはどこにでもあるもの?
人1 どこにでもあるしどこにもないんだ
人2 ??
人1 心の中で生まれるわけだから存在を感じられるのは本人だけ。で、かんじんの本人でさえ無意識の中で感じているわけだから
人2 あると認識できている人はいないってわけか
人1 そうそうそう
人2 けど、どこにでもあるってのは…
人1 だからぁ、授業中に眠っている人ってのは、その机で心のフトンが生まれているんだ。
人2 ?
人1 もしくは、話を聞いているから心のフトンが生まれたのか。さらにもしくは、睡眠不足で心のフトンを持ち歩いているかってわけだ。だからどこにいたって、なにをしていたって心のフトンが生じる可能性はあるし、心のフトンを生じさせることができる
人2 それがどこにでもある……か…
人1 他にも、大体の人は何か理由があって心のフトンが生まれるものだが、人によっては心のフトンを持ち歩かざるを得ない人もいる
人2 そんな人いないでしょ
人1 いるんだよそれが。眠いわけじゃない。眠りたいわけでもない。それでも、気絶するかのように、心のフトンに包まれ、眠りについてしまう人が
人2 怠惰だね
人1 いやいやいや。本人はね。真面目なんだよ。真剣なんだよ。頑張ってるんだよ
人2 え、そんな焦らなくても
人1 ごめん、そんなつもりじゃ
人2 まあとりあえず、どこにでも存在はしているんだね
人1 そう。だから、どこでも寝られる。どこでも寝られる人は、心のフトンを持ち歩いているんだよ。さっきのは、そういう人の話
人2 ふーん
人1 とりあえず、心のフトンってのは睡眠の本質のことなんだよ。誰もが心の中に秘めていて、誰もが敷くことができるけど、気づくことはできない
人2 心の中で抑制されたものの発露か…ダリの時計みたいなこと?
人1 なにそれ?
人2 サラバドール・ダリの時計っていう絵
人1 え?なんたらダリだって?
人2 ぐぐれかす
人1 こっちはこんなに説明してんのに
人2 適当じゃないかって?
人1 そう
人2 だってお前の言ってることは調べても出てこないもん
人1 それもたしかにそうか。なんて調べればいいんだっけ?
人2 ダリ時計。で、出てくると思うよ
人1 ほうほう
人1 なんかグニャグニャしてる
人2 そんな感じで心の中に秘められた布団がフトンなのかなって
人1 なんか違くない?
人2 俺がそっちの話理解できてないから
人1 だからずれててもおかしくないわけだ
人2 無意識や夢に現れるイメージを表現したって意味なら同じかなって
人1 ああ、名付け親についてのこと?
人2 そこの話だね
人1 あー、どうなんだろう
人2 ダリも名付け親も無意識を感じられたんだよ
人1 そうだね。そういう意味では近いと思う。ただ、フトンは言葉としてだから、そういう意味では違うと思う
人2 つまり?
人1 フトンっていう存在が心の中にあって、それで現実の布団は布団って名付けられたんだよ
人2 文字としてフトンが心の中に存在しているってこと?
人1 そう!そういうこと
人2 けど、布団に似た物が心の中にあって、それをフトンと呼んでいるとも考えられるんじゃない?
人1 たしかに?順番が逆ってことだな?
人2 うんうん。心のフトン→現実の布団に布団って名前をつける→心のフトンをフトンと呼ぶってこと
人1 なるほどな。その可能性も考えられなくはない
人2 というか、俺はその方向で考えてる
人1 僕とは逆のようだね
人2 まあ、フトンがあるから眠くなるのか、眠くなるからフトンがあるのかみたいなもんだよ
人1 どちらが先でも結果は変わらないからな
人2 そういうことだね
人1 けど、心のフトンがあったから布団が生まれた。というか、布団が布団と呼ばれたのは、そう、心のフトンがあったから。とする方がなにかと自然であるように感じられる
人2 それだと言語が生まれる前に心のフトンを心のフトンと認識していたことになっちゃうんじゃない?
人1 そう!認識していたんだよ!
人2 言語がないから呼ぶこともできないのにだよ?
人1 無意識の話だからね。認識していたとしても発露されていたときはない。だから逆を言えば、発露されていなくても認識していたときはあるということだ
人2 あーそれが「どこにでもあるしどこにもないんだ」に繋がるってことか
人1 そこの話をしているつもりはなかったが、そこが理解してもらえるとは
人2 なんか、繋がってたね
人1 話はいつもどこかで繋がっているものだよ
人2 かもね。……あのさ、フトンがあるから眠くなるのか、眠くなるからフトンがあるのかってのは心のフトンってことだよね?
人1 そう!その通り!
人2 だったら最初からそう言えばいいのに
人1 まあまあまあ、最終的には伝わったのだから許そうじゃないか
人2 なんでそっちが許す側なんだよ!
人1 だって僕だから
人2 はぁ、なんだこれ
人1 心のフトンについての語り合いだよ
人2 そもそもそんなものないのに
人1 だからあるんだよ
人2 布団が生まれる前から?
人1 フトンは存在していた
人2 ……だから布団がフトンと名付けられたんだよね
人1 そうそう。そう言うこと
人2 なら英語の布団がマットレスとかなの変じゃない?
人1 布団の英語はfutonじゃないか?
人2 それはそうなんだけど、寝る場所としてはマットレスとかの方が適切かなと
人1 たしかにな
人2 それでどうして?
人1 それはだな…そう、えーっと…
人2 わかんないんだ
人1 …最初に布団を作り出して布団と名付けたのは日本人だから
人2 なるほど?
人1 寝る場所としてはfutonと言わないにしても、布団のことは英語でもfutonと呼ぶだろ?
人2 そうだね
人1 だからつまりは、心のフトンを持っていたが日本以外では布団が作り出されなかったわけだ。だからふとんと名付けることがなかった。そして、日本の布団を知ったことでフトンを感じとりfutonと呼んでいるのだよ
人2 うん?……
人1 だからぁ、心のフトンを感じとるには、寝る場所だけに洗練された姿である布団が必要ってことだ
人2 それで英語で布団をふとんって言わない理由は?
人1 だからそもそもそれが間違ってるんだよ。布団はfutonって言うの。ふとんと言う名前は全世界共通なの
人2 なら、うん…それでいいや
人1 そういうこと!
人2 なんか、難しい話してたら眠くなってきた
人1 全然難しい話なんかしてないのに
人2 してるよ
人1 いーや、わかりやすい
人2 話してる方はいいかもだけど、聞く方は理解するのに必死なんだよ?
人1 そうなんだ
人2 ……
人1 それならまあたしかに?疲れるか
人2 疲れる
人1 それで心のフトンが敷かれ始めた訳だ
人2 そうだね
人1 現実では布団の近くにいるの?
人2 もう今寝転がってる
人1 心のフトンが生まれやすい環境だね
人2 そうだね
人1 布団は心のフトンを誘発させる道具だから。布団はそのために生まれたし、心のフトンはフトンであり続けるってこと
人2 ……
人1 そう考えると、眠くなるからフトンがあるのではなく、フトンがあるから眠くなるが正しいのかな?
人2 ……
人1 おやまあ、さっきから心のフトンが敷かれて始めてはいたが、ついに心のフトンが敷かれきってしまったか
人2 ……
人1 心のフトンが敷かれきったと言うべきか、心のフトンに包まれたと言うべきか、どちらが正しいのだろうな
人2 ……
人1 どちらにせよ、今はそこに心のフトンがあるわけだ。敷かれたにせよ包まれたにせよ心のフトンは存在するし、眠くなるのと心のフトンのどちらが先だとしても、眠っている間は心のフトンが存在する
人2 え、なに?
人1 あ、心のフトンから顔を出してきた
人2 は?
人1 いや、起きたなって思っただけ
人2 ごめんね、寝てた
人1 ああ。反応がなかったからな
人2 心のフトンが敷かれちゃってた
人1 使い方がわかるとは心のフトンを理解したじゃないか
人2 うっわ。変なものを知識に入れちゃった
人1 変なものとはなんだ
人2 なんでだよ
人1 心のフトンを理解することは素晴らしいことなんだからな
人2 さっきから頭の中をフトンがぐるぐるして気持ち悪いんだけど
人1 なにその呪い。やば
人2 急に我に返るなよ
人1 頭の中にフトンがあるのは心のフトンを理解できている証拠だな。これで君も心のフトンを感じられるようになるだろう
人2 最悪だ
人1 フトンを感じられるのは良いことだからね
人2 僕は寝るから
人1 心のフトンが敷かれてるもんな
人2 一旦は出てきたけどね。無くなってはいない
人1 フトンがあるから眠くなるのか、眠くなるからフトンがあるのか。どちらが先かは分からないけど、眠っている場所にフトンはある
人2 ……
人1 包まれようがかけられようが、眠り方は人それぞれで、それぞれの心のフトンを持っている
人2 ……
人1 心のフトンを敷き終えて。あとは、眠るだけ

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