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中小企業における企業の取組が離職率等に与える影響(令和元年版「労働経済の分析」より)

本日は、中小企業における企業の取組が離職率等に与える影響について紹介します。
以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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2 中小企業における企業の取組が離職率等に与える影響
●離職率の低下にも両立支援が有効だが、労働者のニーズを把握して雇用管理等を行うことが重要

上述したとおり、従業員の離職率については、100人以下の企業の方が100人超の企業よりも3年前と比較して低下した割合が高くなっているが、本節では企業の取組が離職率等に与える影響について考察する。

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まず、第2-(2)-34図により、企業規模別に働き方改革の取組をみると、ほとんどの取組において企業規模が小さくなるほど実施率が低くなっており、中小企業における取組が遅れていることが分かる。また、企業規模によらず、「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」「残業削減の推進」「休暇取得の促進」などについて、今後新たに実施予定の事業所の割合をみると、企業規模が小さいほど差が大きくなっていることから、今後中小企業におけるこれらの取組が正社員の働きやすさを向上させ、また離職率を低下させる可能性があることが示唆される。
一方、今後の実施予定を含めても、企業規模が小さくなるほど実施率が低下している傾向に変わりがないことは事実であり、今後も引き続き中小企業等における働き方改革の取組の導入に向けた継続的な支援が必要である。

それでは、働き方改革を目的とした企業の取組は、従業員の離職率、新入社員の定着率、求人募集の充足率にどのような影響を及ぼしているのかをみていく。

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第2-(2)-35図により、従業員の離職率、新入社員の定着率、求人募集の充足率について働き方改革を目的とした取組を行っている企業と行っていない企業との間で差があるかをみると、いずれの指標においても、取組を行っている企業の方が行っていない企業よりも3年前と比較して改善していることが分かる。

ここからは、中小企業における働きやすさの向上と従業員の離職率の低下に有効な取組についてみていく。

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第2-(2)-36図の左図により、企業が考える働きやすさの向上に有効な雇用管理をみると、従業員規模計(第2-(2)-13図の右図)に比べ、「仕事と介護との両立支援」「従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規雇用・非正規雇用間等)」「仕事と病気治療との両立支援」が有効になっている。

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第2-(2)-36図の右図により、企業が考える働きやすさの向上に有効なワーク・ライフ・バランスを推進するための取組をみると、従業員規模計(第2-(2)-16図の右図)に比べ「経営トップからの呼び掛けや経営戦略化による意識啓発」が有効ではなくなっている。

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第2-(2)-37図の左図により、企業が考える従業員の離職率の低下に有効な雇用管理をみると、従業員規模計(第2-(2)-20図の右図)において有効であったものに加え、「仕事と介護との両立支援」が有効となる一方で、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」が有効ではなくなっている。

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第2-(2)-37図の右図により、企業が考える従業員の離職率の低下に有効なワーク・ライフ・バランスを推進するための取組をみると、従業員規模計(第2-(2)-21図の右図)において有効であったものに加え「ノー残業日の設定」「育児休業制度や介護休業制度の利用促進」が有効となっている。
これらのうち、企業全体では有効であった「裁量権の拡大」が、中小企業では有効ではなくなっている背景の要因としては、上述したとおり、企業全体と比べて、この取組が既に実施されている中小企業が比較的多いことが考えられる。
従業員の離職率の低下に有効な取組についても、働きやすさの向上に有効な取組と同様に、業務裁量性の高さや雇用管理制度運用の柔軟さといった中小企業の特徴が離職率の低下にも寄与している可能性があるが、両立支援を実施することにより、離職率や働きやすさが改善することが期待される。

3 中小企業における「働きやすさ」の実現に向けて

最後に、本節のこれまでの分析で明らかになった中小企業の課題整理する。
まず、従業員規模が100人以下の企業に所属する正社員は、100人超の企業に所属する者より働きやすい職場と感じており、3年前と比較して離職率が低下したと回答した割合も高くなっている。この背景には、中小企業は女性や高齢者の従業員が比較的多いという特徴から、業務裁量性の高さや雇用管理制度運用の柔軟性といった中小企業の特色が、職場の働きやすさにプラスに影響しているものと考えられる。
また、同様の背景から、中小企業の正社員は、働きやすさの向上に関して、「人事評価に関する公正性・納得性の向上」に加えて、「仕事と病気治療との両立支援」を重視している。
一方で、中小企業における働き方改革の取組の実施状況をみると、大企業などと比べて、ほとんどの取組において現時点での実施率は総じて低くなっているが、今後実施予定と回答している企業の割合は高くなっている。今後、中小企業における働き方改革に関する新たな取り組みや、従来運用で対応していた取組の制度化が進めば、中小企業における正社員の働きやすさの向上や、離職率の低下の余地が十分にあるものと考えられる。
特に、中小企業においては、「仕事と介護との両立支援」「仕事と病気治療との両立支援」「育児休業制度や介護休業制度の利用促進」などが大企業等と比べて働きやすさの向上や離職率の改善に有効となっており、仕事と育児・介護・病気治療との両立支援等に引き続き重点的に取り組むことが重要であると考えられる。
従業員規模100人以下の企業という集合全体でみた場合、両立支援などが有効な取組として挙がってきたが、個々の企業で見た場合、現在は両立支援を必要とする労働者がいない企業も存在し得る。しかしながら、現在は両立支援を必要としない者も、いずれは必要となるときが来る可能性もある。第1章で述べたとおり、「働きやすい職場」とは、働く人が安心して快適に働ける職場環境であり、将来的なライフイベントに応じた働き方の選択につながっていくものである。企業と働く人の双方が職場の現状や課題を共有しつつ、各企業の事情に応じた雇用管理やワーク・ライフ・バランスを推進するための取組を協力して進めていくことが重要である。
なお、働き方改革の実施状況については、今後の実施予定を含めても、その水準は大企業などと比べて依然低い状態にあるのも事実であり、今後も引き続き中小企業における働き方改革の取組の導入に向けた継続的な支援が必要である。
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今回の分析で「働き方改革」に関する取り組みとしてあげられたのは次の項目です。
①休暇取得の促進
②長時間労働削減のための労働時間管理の強化
③「勤務間インターバル制度」の導入
④残業削減の推進
⑤朝型勤務・「ゆう活」の実施
⑥「フレックスタイム」等の柔軟な就業時間管理の導入
⑦「テレワーク制度」の導入
⑧「限定正社員」等の雇用形態の導入
⑨非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進
⑩非正規雇用労働者の待遇改善
⑫育児・介護中の職員が働きやすいような環境整備
⑬⑫のうち、男性の育児休業取得等の育児参加の促進
⑭労働者の病気の治療と仕事の両立を可能とする社内制度の整備
⑮パワーハラスメント防止対策の推進
⑯副業・兼業を容認
⑰働き方・休み方に関する労使の話合いの機会の設定
⑱「働き方改革」に対する経営トップのメッセージの発信

働き方改革の取組をみると、企業規模にかかわらず
「長時間労働削減のための労働時間管理の強化」
「残業削減の推進」
「休暇取得の促進」
が多いが、企業規模が小さいほど実施率は低下する傾向にあります。
また、全般的に小規模な企業ほど、働き方改革にこれから取り組む、という回答が多く、取り組みが遅れていることが伺えます。
また、働き方改革に取り組んでいる企業のほうが、当然ですが離職率が低い傾向にあります。

次に、働きやすさを向上させる雇用管理としてあげられたのは次の項目です。
①人事評価に関する公正性・納得性の向上
②本人の希望を踏まえた配属、配置転換
③業務遂行に伴う裁量権の拡大
④優秀な人材の抜擢・登用
⑤優秀な人材の正社員への登用
⑥いわゆる正社員と限定正社員との間での相互転換の柔軟化
⑦能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ
⑧能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援
⑨労働時間の短縮や働き方の柔軟化
⑩採用時に職務内容を文書で明確化
⑪長時間労働対策やメンタルヘルス対策
⑫有給休暇の取得促進
⑬職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
⑭仕事と育児との両立支援
⑮仕事と介護との両立支援
⑯仕事と病気治療との両立支援
⑰育児・介護・病気治療等により離職された方への復職支援
⑱従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規・非正規間等)
⑲経営戦略情報、部門・職場での目標の共有化、浸透促進
⑳副業・兼業の推進

従業員規模100人以下の企業における働きやすさを向上させる雇用管理は、全体の合計に比べて
「仕事と介護との両立支援」
「従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規・非正規間等)」
「仕事と病気治療との両立支援」
が加わっています。

従業員規模100人以下の企業における離職率を低下させる雇用管理は、全体の合計に加えて
「仕事と介護との両立支援」が有効となる一方で、
「業務遂行に伴う裁量権の拡大」が有効ではなくなっています。

続いて、ワークライフバランスの取り組みについての項目は次の通りです。
①アンケート調査の実施などによる実態面の把握
②業務プロセスの見直し(組織間・従業員間の業務配分のムラを解消する等)
③休暇・急な早退等が必要な際、従業員間で融通し合えるよう十分な人員数を配置
④休暇が必要な際、従業員間で融通し合えるよう中期的な休暇予定を従業員間で見える化する
⑤休暇・急な早退等を申請しやすい職場雰囲気の醸成
⑥有給休暇を取得する必要のある下限を設定する
⑦残業時間に上限を設定する
⑧まとまった日数での休暇取得の奨励
⑨ノー残業日の設定
⑩長時間勤務労働者やその上司等に対する指導・助言
⑪残業させず、有給休暇取得を促す上司が評価されるような仕組みを導入する
⑫労働時間管理、有給休暇取得、健康確保に係る、管理職向けの研修・意識啓発
⑬労働時間管理、有給休暇取得、健康確保に係る、非管理職向けの研修・意識啓発
⑭経営トップからの呼び掛けや経営戦略化による意識啓発
⑮部門間の取組状況の見える化・情報共有
⑯短時間勤務制度やフレックスタイム制度等より柔軟な労働時間制度を導入・推進
⑰時間単位、半日単位など柔軟な有給取得制度の導入・推進
⑱テレワーク等の柔軟な働き方の導入・推進
⑲育児休業制度や介護休業制度の利用促進
⑳企業内に託児所を併設

働きやすさを向上させるワーク・ライフ・バランスを推進するための取組は、中小企業は全体の合計に比べて
「経営トップからの呼び掛けや経営戦略化による意識啓発」
が有効ではなくなっています。

離職率を低下させるワーク・ライフ・バランスを推進するための取組は、全体の合計に加えて
「ノー残業日の設定」
「育児休業制度や介護休業制度の利用促進」
が有効となっています。

全般的に、中小企業は大企業と比べて働き方改革やライフ・ワーク・バランスの取り組みが遅れていることがわかります。
伍魚福でも他社に遅れをとらないよう、さらなる改善に取り組んでいきたいと考えています。

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山中勧/伍魚福社長
最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan