ポスト・コロナを見据え、歴史ある地元ホテルをM&Aにより事業承継した企業(中小企業白書2021年度版より)
本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第3章 事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」の続きです。
「第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用」より、今回は「2.M&A実施意向 ④新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた中小企業のM&A実施意向の変化」、「ポスト・コロナを見据え、歴史ある地元ホテルをM&Aにより事業承継した企業」の事例について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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ポスト・コロナを見据え、歴史ある地元ホテルをM&Aにより事業承継した企業
所在地:沖縄県那覇市
従業員数:約50名
資本金:4,500万円
事業内容:宿泊業
株式会社南西観光
経営の安定化を目指し、M&Aによる事業多角化を検討
沖縄県那覇市の株式会社南西観光は、1974年創業の観光客向けホテルを営む企業である。同社の大田誉社長は2015年に社長に就任した。就任当時、同社が運営する「南西観光ホテル」では、修学旅行生やアジアからのインバウンド旅行客を獲得し高稼働率を維持していたが、ホテルの老朽化などの課題もあり、大田社長は中長期的な視点で南西観光ホテル事業単体での成長に不安を感じ、事業多角化を目指した。
当初は物販事業など他業種への進出なども検討したが、これまでの知見をいかせるホテル業に的を絞ることにし、M&Aの活用を検討。南西観光ホテルのオペレーションを横展開できる、同規模かつ同じような客層のホテルの譲渡案件を希望した。2019年7月、取引金融機関を通じて、沖縄県事業引継ぎ支援センターに寄せられた沖縄市内にある「デイゴホテル」の譲渡に関する情報を入手した。
地元で愛される家族経営のホテルを引き継ぐ
デイゴホテルは、後継者不在のために2018年頃から譲渡先を探していた。家族経営で地元密着型という共通点に魅力を感じ、大田社長は前向きに検討を進めた。デイゴホテルは親近感のある接客によって、スポーツ合宿を始め、多くのリピーターを獲得していた。またレストランが地元の年配者に人気であることも強みだった。さらに、沖縄市内では珍しく客室数を超える台数の駐車場を備えていることも好材料だった。交渉の場でデイゴホテルからは、屋号の継続と従業員20名の雇用維持が条件として提示された。契約に向けて検討、準備を進める中で新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が
大きく変わったが、2020年7月、M&A実施に至った。
大田社長は、「国内外の人の行き来が平常に戻れば、沖縄は早期に観光客を取り戻すことができ、以前のような宿泊需要が期待できる。新型コロナウイルス感染症の影響が大きくなる中、M&Aを進めるべきか悩んだが、ポスト・コロナで利益を最大化するためにも、営業が落ち着いているときこそ将来のための投資を行い、準備を整える適切な機会だと考えた。」と語る。
両社の強みをいかしポスト・コロナに備える
感染症流行の影響を受け、2020年の売上高は南西観光ホテルが前年比60%減だったのに対し、デイゴホテルは48%減だった。リピーターを多く持ち、日中のレストラン事業にも強いデイゴホテルの集客力の底堅さが再確認できた。現在は、両ホテルでテレワークやワーケーション需要に応えるための共用ワークスペースの整備を進めている。また、デイゴホテルのアットホームな接客、南西観光ホテルのスマートなオペレーションという両ホテルの持ち味をいかしながら、将来的には人材交流も行うなどして、接客品質を高めていきたい考えを持っている。「地元に愛されてきたホテルを更に成長させ、伝統をしっかりと受け継いでいきたい。」と大田社長は語る。
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コロナ禍でホテル業は大変な状況となっています。そんな中、後継者のいない企業を受け継いだ事例です。
同業とはいえ、それぞれの客層や強みも異なることから、相乗効果が得られそうですね。
都道府県の「事業引継ぎ支援センター」、小規模な、我々の事業規模でもお役に立てるM&Aの情報がありそうです。
兵庫県、神戸市の「事業引継ぎ支援センター」について情報収集してみたいと思います。
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