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若者も高齢者も安心できる年金制度の確立・日本年金機構について(令和3年版 厚生労働白書より)

本日は、「第2部 現下の政策課題への対応」の「第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立」、「第2節 公的年金の正確な業務運営」、「1 日本年金機構について」、「2 日本年金機構の取組み」を紹介します。
以下、「令和3年版 厚生労働白書」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
第2節 公的年金の正確な業務運営
1 日本年金機構について

2010(平成22)年1月1日、旧社会保険庁が廃止され、政府が管掌する公的年金事業の運営を担う非公務員型の公法人である日本年金機構が設立された。
日本年金機構は、厚生労働大臣の監督の下、国と密接な連携を図りながら公的年金事業に関する業務運営を行うことにより、公的年金事業及び公的年金制度に対する国民の皆様の信頼を確保し、もって国民生活の安定に寄与することを目的とし、厚生労働省が定めた中期目標や日本年金機構が策定した中期計画及び各年度の年度計画に基づいて計画的に業務を行ってきた。2019(令和元)年度からは、第3期中期目標(対象期間:2019(平成31)年4月1日から2024(令和6)年3月31日までの5年間)及び中期計画に基づいて業務を実施している。

2 日本年金機構の取組み
日本年金機構においては、年金の適用、保険料の徴収、年金の給付、年金記録の管理、年金相談という一連の業務を正確かつ確実に遂行するとともに、提供するサービスの質の向上を図ることを基本的な役割としている(図表5-2-1、図表5-2-2)。

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(1)公的年金事業における新型コロナウイルス感染症への対応
今般の新型コロナウイルス感染症への対応として、以下の特例措置を講じた。
・国民年金保険料について、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020(令和2)年2月以降に一定程度収入が低下し、当年中の所得の見込が保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれる方について、免除等を適用。
・新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年2月以降の任意の期間において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少している等の場合に、事業主からの申請により、厚生年金保険料等の納付を、無担保かつ延滞金なしで1年間猶予(2021(令和3)年2月1日までに納期限が到来する厚生年金保険料等が対象)。
・新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、報酬が著しく低下した方などの厚生年金保険料等について、申請により報酬低下の翌月から標準報酬月額の減額改定を実施。

(2)国民年金の保険料納付率向上と厚生年金の適用促進
国民年金保険料の納付対策については、これまで納付督励や免除等勧奨業務を受託する事業者との連携強化、口座振替やクレジットカード納付、コンビニでの納付の促進等による保険料を納めやすい環境づくりなど、保険料の収納対策の強化に取り組んできたところである。納付率は、2013(平成25)年度における最終納付率(2011(平成23)年度分保険料)以降は上昇傾向にあり、2019(令和元)年度における最終納付率(2017(平成29)年度分保険料)は、前年度から1.7ポイント増の76.3%*9となった。
*9 国民年金保険料は過去2年分の納付が可能であり、上記の数値は2017年度分保険料の過年度に納付されたものを加えた納付率(最終納付率)。

近年では、納付率の更なる向上を図るため、年齢や所得、未納月数等、未納者の属性に応じて定期的に納付書、催告状等の送付を行うとともに、控除後所得300万円以上かつ未納月数7月以上の全ての滞納者に対する督促の実施(督促状を送付し、指定期限内の納付を促しても納付がない場合には、財産差押等の手続に入る。)について、2018(平成30)年度から取り組んでいるほか、悪質な滞納者に関する厚生労働省から国税庁への強制徴収委任制度の活用など、収納対策の強化を図っている*10。
*10 滞納処分や国税庁への強制徴収委任については、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、(1)の対応を優先して実施するため、一時停止する等の措置を講じた。

厚生年金保険の適用促進については、2020(令和2)年度から4年間で集中的に取り組んでおり、法務省からの法人登記情報の提供に加え、国税庁から提供されている法人の源泉徴収義務者情報や雇用保険情報を活用し適用すべき事業所を把握し、従業員規模に応じて、効率的・効果的な加入指導を実施している。また、地方自治体等が行う新規営業許可申請時等に社会保険の加入状況を確認し、仮に本来加入すべき事業所が加入していない場合には、その情報提供に基づき加入勧奨を行っている。

(3)年金給付や年金相談業務の改善
年金の給付については、年金請求書を受けつけてからお客様に年金証書が届くまでの標準的な所要日数をサービススタンダードとして定め、達成率90%以上を維持するよう取り組んでいる。このほか、年金受給にできる限り結びつけていくための取組みとして、受給者の申請忘れ・申請漏れを防止するため、年金支給年齢に到達する直前に、年金請求書を本人宛に送付することや、69歳到達時に受給資格期間を満たしながら年金請求を行っていない方に対して、年金請求を促すためのお知らせを送付すること等を行っている。ま
た、年金給付の正確性の確保を推進するため、2020(令和2)年4月より、年金決定時チェックを実施し、事務処理誤りの予防・早期対応を図っている。
年金相談については、年金事務所等における待ち時間の短縮や平日昼間に相談できない方への相談時間の確保を図るため、毎週月曜日の受付時間延長、毎月第2土曜日の開所とともに、全ての年金事務所における予約制の実施、混雑時の相談ブースの増設や年金相談職員の配置等の対策に取り組んでいる。
お客様の声を反映させる取組みとして、各年金事務所への「ご意見箱」の設置、ホームページ上に「日本年金機構へのご意見、ご要望」コーナーの設置、「お客様満足度アンケート調査」等の実施など、お客様目線に立った業務改善に向けた取組みを行っている。
また、日本年金機構の毎年度の事業実績、お客様サービス向上の取組み、予算・決算などの情報をわかりやすくお客様に提供するため、毎年、年次報告書(アニュアルレポート)を作成している。

(4)デジタル化への対応等
1 年金手続における申請のオンライン化への対応

社会保険関係の手続きは、紙媒体やCD・DVDによる電子媒体による申請の他、電子申請が可能となっており、2020(令和2)年4月からは、GビズID*11を活用したID・パスワード方式による電子申請を新たに開始した。また、同月以降、資本金1億円を超える大法人等については、報酬月額算定基礎届等の電子申請が義務化された。
*11 経済産業省が提供する、事業者が1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システム

電子申請は、年金事務所等へ来所いただく必要がなく、24時間いつでもどこからでも手続きが可能である。特に、厚生年金保険の適用事業所が行う手続については、紙や電子媒体による申請よりも処理が早いなどのメリットもあることから、主要な手続における*12電子申請の利用割合が30.6%(2019(令和元)年度末)から49.6%(2020年度末)に大幅に増加している。
*12 健康保険・厚生年金保険被保険者に係る資格取得届、資格喪失届、報酬月額算定基礎届、報酬月額変更届、賞与支払届並びに健康保険被扶養者異動届並びに国民年金第3号被保険者関係届の7手続

また、公的年金事業においては、2020年12月末以降、国民や事業主等に対して押印又は署名を求めている年金関係手続について、原則として押印又は署名を不要としたほか、更なる電子申請利用促進に取り組んでおり、利用方法を紹介する動画やパンフレットの作成など利用環境の改善を図るとともに、電子申請を利用していない事業所に対して、操作説明などのサポートも含めた集中的な利用勧奨を実施している。今後も、マイナポータル等も活用し、電子申請の推進に取り組んでいく。

2 マイナンバー制度への対応
日本年金機構におけるマイナンバー制度への対応については、2017(平成29)年1月から相談・照会業務におけるマイナンバーの利用、2018(平成30)年3月からマイナンバーによる各種届書の提出などが実施されている。
マイナンバーを活用した年金関係の情報連携については、日本年金機構から地方公共団体等への情報照会は、2019年7月から順次本格運用へ移行している。また、地方公共団体等から日本年金機構への情報照会は、2019年10月から順次本格運用へ移行している。
年金関係の情報連携の本格運用が開始された場合には、年金関係の手続を行う際の課税証明書等の添付や各種手当の申請を地方公共団体等に行う場合の年金関係書類の添付が不要となり、国民の負担が軽減するとともに、行政機関の事務の効率化が図られる。

3 情報セキュリティ対策の推進
厚生労働省及び日本年金機構においては、2015(平成27)年5月に発生した、日本年金機構における外部からの不正アクセスによる情報流出事案における反省を踏まえ、情報セキュリティ対策の強化等、国民の重要な年金個人情報を安全かつ適切に取り扱うための取組みを進めてきたところである。
デジタル化への対応等にあたり、これまでに講じた情報セキュリティ対策の維持・徹底を図った上で、外部からの攻撃手法の多様化かつ巧妙化など、外部の環境変化や情報技術の進展に応じた情報セキュリティ対策の更なる強化等、必要な見直しを継続的に行っていくこととしている。

(5)ねんきんネットとねんきん定期便について
1 「ねんきんネット」の機能改善と利用促進

2011(平成23)年2月から、日本年金機構において、ご自身の年金記録などをパソコンやスマートフォンで24時間いつでも手軽に確認できる「ねんきんネット」のサービスを提供している。
「ねんきんネット」では、お客様サービスの向上を図るため様々な機能を提供しており、現在と今後の働き方や収入、期間等の条件を設定した場合の年金見込額の試算や、電子版の通知書の閲覧、原本が必要な場合における通知書の再交付申請などを行うことができる。
「ねんきんネット」は、パソコンやスマートフォンから日本年金機構のウェブサイトにアクセスし、登録を行うことで利用が可能となり、ユーザID取得者数は、2021(令和3)年3月末現在、666万人となっている。
また、2018(平成30)年10月から、マイナポータルとの属性連携を開始したことにより、マイナンバーカードがあれば、「ねんきんネット」に登録していなくとも、マイナポータルからアクセス可能となっており、リーフレット等を活用してマイナポータルとの連携に関する周知を行っている。

2 「ねんきん定期便」の見直しについて
国民年金・厚生年金保険の全ての現役加入者に毎年誕生月に送付する「ねんきん定期便」について、記載内容を見やすく分かりやすくし、公的年金制度のポイントを周知するため、2019(平成31)年4月から以下の見直しを行っている。
・文字を減らして大きくし、イメージ図を活用して、見やすく改善
・年金の受給開始時期は、60~70歳の間で選択できることを明記
・年金の受給開始時期を70歳まで遅らせた場合、65歳と比較して年金額が最大42%増加することがわかるイメージ図を表示
・節目年齢(35歳、45歳、59歳)に送付する封書の「ねんきん定期便」には、新たに繰り下げ受給のメリット等を分かりやすく説明したリーフレットを追加
また、2020年度においては、50歳以上の「ねんきん定期便」について、受給開始年齢を70歳まで繰り下げた場合のイメージ図に年金見込額を追加し、50歳未満の「ねんきん定期便」について、今年までの「加入実績に応じた年金額」に加え、前年までの「加入実績に応じた年金額」を表示するなどの見直しを行っている。
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ちょうど昨日、3月3日、「ねんきん定期便」の談合が摘発されたことがニュースになりました。なんというタイミングでしょう(笑)。
以下、日本経済新聞からの引用です。
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日本年金機構が発注する「ねんきん定期便」などの作成業務を巡る談合問題で、公正取引委員会は3日、印刷業者26社の独占禁止法違反(不当な取引制限)を認定した。うち25社に対し他社と情報交換しないことなどを求める排除措置命令を、24社に計約17億4000万円の課徴金納付命令をそれぞれ出した。
発注者の年金機構には入札方法の見直しなどを求めた。
公取委によると、ねんきん定期便などの作成、発送に関する一般競争入札や見積もり合わせを巡り、遅くとも2016年5月から印刷大手のトッパン・フォームズ(東京)など26社が受注調整していた。
共同印刷やナカバヤシなどの6社が幹事役として各社の希望を確認。受注予定者や入札価格などを決めて談合を主導したという。6社は新規参入者に談合に加わるよう勧誘したほか、受注希望者が多い場合に他事業者を下請けで入れることを条件に受注予定者を決めるなどしていた。
公取委はこうした行為を「密に情報のやりとりをし、談合により発生した利益を分け合っていた」と指摘。排除措置命令に談合行為の取りやめのほか、対象業務の受注について他社と情報交換しないことを盛り込んだ。
年金機構による説明会や入札が業者が集まる場になっていたとして、同機構に対しても電子入札など入札方法の見直しを要請した。16年1月ごろに談合情報を把握した同機構が公取委に通報せずに入札を再開したことも不適切と判断して、適切な通報を求めた。
年金機構を巡っては1990年代にも前身の社会保険庁の入札業務を巡って談合が発覚。当時刑事告発され、有罪となった事業者も今回の違反行為者に含まれている。
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社会保険庁時代の体質がまだ残っているのかもしれません。
社会保険庁の過去の不祥事については、ウィキペディアが詳しいです。

収賄や横領、談合などの不祥事が相次ぎ、旧社会保険庁が廃止され、政府が管掌する公的年金事業の運営を担う非公務員型の公法人、日本年金機構が設立されたのは2010年のことです。
年金記録の杜撰な管理が問題になったのは2007年。
最近のことのように思えますが、15年も経っているんですね。

談合で印刷業者が得た利益は、我々が負担した厚生年金などのお金です。ウクライナ侵攻の報道に隠れて地味な扱いですが、これは実質的に我々の年金の原資に関する詐欺・横領事件と言えるでしょう。
関与した印刷事業者には、国民への謝罪ともに、損害賠償してもらわねばなりません。
以下公正取引委員会のウェブサイトです。

談合で摘発された事業者の一覧は以下の通りです。

https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2022/mar/daiyon/220303_02beppyou.pdf



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