働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など・化学物質、石綿による健康障害の防止(令和3年版 厚生労働白書より)
本日は、「第2部 現下の政策課題への対応」の「第2章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など」、「第5節 労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり」、「4 化学物質、石綿による健康障害の防止」を紹介します。
以下、「令和3年版 厚生労働白書」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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第2章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など
第5節 労働者が安全で健康に働くことができる職場づくり
4 化学物質、石綿による健康障害の防止
(1)職場における化学物質管理
化学物質は、製造業や建設業等で使用されるほか、サービス業等においても広く使用されるなど、産業や日常生活において不可欠な存在である。他方、化学物質を不適切に取り扱うと働く人の安全や健康を損なうこととなる。このため労働安全衛生法令では、化学物質のうち特に危険有害な123物質を、局所排気装置等の換気対策、作業環境中の有害な物質の気中濃度の測定、健康診断、保護具の使用等の規制対象とし、また、674の化学物質について、譲渡、提供する際の容器等へのラベル表示、安全データシートによる危険有害性情報の伝達を求めるとともに、その使用に際してのリスクアセスメントの実施等を事業者に求めている。
近年、胆管がんや膀胱がんなどといった化学物質による健康障害が発生し、社会的に注目を集めている。厚生労働省では、管轄する労働局・労働基準監督署と協力し、また、(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の調査を通じて原因物質の推定と対策の検討を進め、順次健康障害防止対策に係る指導や要請を行っている。
作業環境測定を行う必要がある作業場について、化学物質の管理や有害業務の状況等をこのリスク評価制度が創設された2006(平成18)年以降、これまでに29物質が特定に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器を用いる作業環境測定ができるよう作業環境測定法施行規則等を改正し、2021(令和3)年4月1日から施行される。
溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンについては、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働者への化学物質へのばく露防止措置や健康管理を推進するため、労働安全衛生法施行令及び特定化学物質障害予防規則を改正し、特定化学物質(管理第二類物質)として位置づけ、発散防止抑制措置、作業環境測定等の実施、作業主任者の選任、健康診断の実施等の措置、また金属アーク溶接等作業については溶接ヒュームの濃度の測定、測定結果に基づく有効な呼吸用保護具の使用、呼吸用保護具の適切な装着確認等の措置を義務付け、原則2021年4月1日から施行される。
また、ベンジルアルコールを含有する塗膜剥離材を使用した際の中毒事案が多発したことを踏まえ、2021年1月に、ベンジルアルコールを1%以上含有する製品を譲渡、提供する際の容器等へのラベル表示、安全データシート(SDS)による危険性・有害性等の情報伝達及び使用に際してのリスクアセスメントの実施を義務付けた。
(2)リスク評価に基づく化学物質管理
産業現場で使用される化学物質は数万種類に及び、毎年1,000物質程度の新規化学物質が製造又は輸入され、厚生労働省に届けられている。これらのうち危険有害性情報を有することが国の内外で確認された化学物質については、厚生労働省による化学物質のリスク評価制度の下、事業場における使用実態を調査し、必要が認められた場合には労働安全衛生法令の対象とすることにより事業者にばく露防止措置を求めている。
このリスク評価制度が創設された2006(平成18)年以降、これまでに29物質が特定化学物質障害予防規則の対象に追加されている。
(3)石綿(アスベスト)対策の適切な実施
石綿*25製品については、2006(平成18)年9月から、輸入や国内での製造等を禁止しており、代替化が困難であったため製造等禁止の措置を猶予していた一部の特殊な製品についても、2012(平成24)年3月には代替化が完了し、製造等は全面的に禁止されている。
*25 石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、そのばく露により、主に石綿肺、肺がん、中皮腫のような健康障害を生ずるおそれがある。
一方で、石綿の製造等禁止前に建てられた建築物に今も多くの石綿建材が残っている。こうした石綿使用建築物の解体や改修が進んでおり、今後その量がピークを迎えることから、建築物の解体等の作業に従事する労働者の石綿ばく露の防止は、一層重要な課題となっている。このようなことから、石綿含有有無の事前調査・分析調査を行う者の要件化、事前調査結果の労働基準監督署への届出制度の新設等を内容とする石綿障害予防規則等の一部を改正する省令を2020(令和2)年7月以降に公布したところである。
また、2020年11月以降、相次いで0.1%を超えて石綿を含有する製品が流通する事案が発生したことを踏まえ、改めて輸入事業者、販売事業者等に石綿含有製品の輸入、譲渡、提供等の禁止の徹底のための措置及び流通が確認された場合の対応を指導している。
また、大阪泉南アスベスト訴訟において、2014(平成26)年10月に、石綿工場の元労働者の健康被害について国の損害賠償責任を一部認める最高裁判決が言い渡されたことを受け、厚生労働大臣談話を発表し、国の損害賠償責任が認められた方々と同様の状況にあった方々について、同判決に照らして訴訟上の和解の途を探ることとしており、その周知を図っている。
(4)石油コンビナート等における労働災害防止対策
石油コンビナート等の事業所において多数の死傷者を出す爆発火災等の重大事故が頻発したことを受け、2014(平成26)年5月に、消防庁、厚生労働省及び経済産業省の3省により「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」が設置された。同会議では、関係業界団体に対し、石油コンビナート等の災害防止対策について行動計画の策定等を要請し、適宜、フォローアップを行うとともに、3省連絡会議において継続的に情報の共有や連携を図り、3省共同運営サイトにより、事故情報や再発防止策等の発信に努めている。
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化学物質、石綿による健康障害の防止の取り組みです。
石綿については、中皮腫や肺がんの発生で健康被害を受けた方も多くおられ、マスコミの報道もよく見かけます。
昔建材としてたくさん使われていたものの、解体など、今後も石綿による健康被害が発生する可能性があるため、注意が必要です。
さらに、今後も、新たな化学物質が利用されることが想定されますので、行政の取り締まりを待つのではなく、使用する企業側の未然防止の姿勢が求められます。
これに限らずではありますが、いろいろなリスクの想定と、事前対策を心がけなければなりません。