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各工事現場の進捗状況をクラウドサービスで一括管理し、業務配分の適正化により生産性の向上や働き方の多様性を実現した企業(中小企業白書2021年度版より)

本日は、「第2部 危機を乗り越える力」「第2章 事業継続力と競争力を高めるデジタル化」の続きです。
「第2節 中小企業におけるデジタル化に向けた現状」より、今回は「各工事現場の進捗状況をクラウドサービスで一括管理し、業務配分の適正化により生産性の向上や働き方の多様性を実現した企業」の事例について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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各工事現場の進捗状況をクラウドサービスで一括管理し、業務配分の適正化により生産性の向上や働き方の多様性を実現した企業
所在地:岩手県北上市
従業員数:141名
資本金:2,300万円
事業内容:総合工事業
株式会社小田島組

限られた人手で受注量を確保するため、工事のデジタル化を目指す
岩手県北上市の株式会社小田島組は、県内全域で公共土木工事を手掛ける企業である。同社の小田島直樹社長は2005年に「売上高5年で2倍」の経営計画を掲げ、受注量の確保に合わせて従業員数も積極的に増加させたものの、経験の浅い若手従業員の比率がベテラン従業員より高くなっていった。小田島社長は「建設業は経験産業。一人前になるのに5年以上は必要といわれているが、そんなには待っていられない。」と、若手従業員とベテラン従業員それぞれの生産性を向上させる方法を模索。限られた人手で受注量を最大化する方法として思い付いたのが、「公共工事のデジタル化」である。「セントラルキッチン方式」(注)を参考に、建設現場事務所の内勤作業を1か所に集約して管理すれば、一定の品質を保つことができると考えた。
(注)飲食業において、1か所で全店分の調理をして各店に送り、各店では簡単な作業だけで客に料理を提供する方式。各店にベテラン調理人を必要とせず、料理の品質も保つことができる。

クラウドサービスを活用し、工事の進捗管理を効率化
小田島社長はまず、現場単位で管理していた工事の現場の様子や進捗状況に関する写真管理を本社で一括管理するように変更。

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公共工事では進捗状況や工事完了時に現場写真を撮るため、現場で撮影したデータの収集・管理を若手従業員に任せ、ベテラン従業員には写真管理に割いていた時間を使い、難しい工事の現場作業に注力させた。若手従業員は、多くの工事現場を撮影し、ベテランが現場作業に取り組む様子を知ることで早期戦力化にもつながっていった。仕事内容を細分化し、経験が不要な仕事を集約化したことで、若手とベテラン双方の生産性を高めることに成功した。また、データ管理などの仕事は時間も場所も選ばないため、子育て中の女性が家事や育児の合間に自宅で仕事をできるようになった。データ管理と並行して、書類の電子化やチャットツールの利用を社内で徹底。人やモノが移動する時間の無駄を取り除き、工事ごとの進捗管理や社内の連携促進にも取り組んだ。安全管理の品質に差が生じないよう、「こんな場所が危なかった」など危険な場所の写真データと現場作業者の気付いたコメントを共有することで、事故を未然に防ぐことや社内の安全意識の啓発にもつながっている。

デジタル技術をいかした業容拡大と働き方改革推進を見据える
クラウドサービス導入当初は現場の反発もあったが、次第に効果が現われ始めると、いつしか同社では欠かせないツールとなった。こうした取組により、小田島社長が経営計画を掲げた2005年には年間受注件数が5件程度であったが、2020年には年間受注は24件、売上高は約35億円にまで増加。今後に向けては、RPAによる入力業務の自動化や、現在受注している他社の写真管理サービス事業を拡大させていく構想もある。「経験不足の従業員に仕事を任せるための苦肉の策であったが、今では働き方の多様性の実現にもつながっているし、生産性が向上し収益が上がれば、従業員にも給与として還元できる。デジタル技術をフルに使いこなし、働き方の多様性を維持したまま給与水準の向上にも努めていきたい。」と、小田島社長は夢を語る。

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クラウドシステムを活用して成長に繋がった企業の事例です。
そもそも、5年間で売上倍増の計画を立てて、従業員の採用を進めたという攻めの経営から、若手従業員の活用のためにITツールを用いて全体の生産性向上につなげています。

以前、2018年度版中小企業白書から「中小企業の生産性向上への道筋」についてnoteに書きましたが、企業の成長のためには、付加価値の伸び率と従業員数の伸び率のマトリックスで考える必要があります。
この事例の企業は、従業員数の伸び率を先行させ、一旦は非効率的な成長となったものの、ITツールの活用で付加価値の伸びが付いてきた、という典型的な事例であると感じます。
「冒険しないと飛躍がない」(日本経営合理化協会)といいますが、どのような成長の道筋をつけるのか、伍魚福でも中期経営計画の中で明らかにしたいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan