中小企業の雇用状況(中小企業白書2021年度版より)
本日は、「第1部 令和2年度(2020 年度)の中小企業の動向」の続きです。
今回は、中小企業の雇用状況について紹介します。
以下、「中小企業白書2021年度版」から引用します(以下特記なければ、画面キャプチャ含めて同じ)。
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2.中小企業の雇用状況
ここからは、中小企業の雇用をめぐる状況について見ていく。
第 1-1-55 図は、景況調査を用いて、業種別に従業員の過不足状況を見たものである。
2013 年第4四半期に全ての業種で従業員数過不足 DI がマイナスになり、その後は人手不足感が強まる傾向で推移してきた。2020 年に入ると、この傾向が一転して、第2四半期には急速に不足感が弱まった結果、製造業と卸売業では従業員数過不足 DIがプラスとなった。足元では、いずれの業種でも従業員数過不足 DI はマイナスで推移している。
第 1-1-56 図は、従業者規模別に雇用者数の前年同月差の推移を見たものである。
これを見ると、2020 年4月以降に、従業者規模が「1~29 人」、「30~99 人」の企業において、雇用者数が前年より大きく減少している状況が見て取れる。
この従業者規模が「1~29 人」、「30~99 人」の企業について、業種別に 2020 年における雇用者数の前年同月比の推移を見たものが、第 1-1-57 図及び第 1-1-58 図である。
従業者規模が「1~29 人」の区分では、「宿泊業, 飲食サービス業」、「生活関連サービス業, 娯楽業」において、前年同月比で大きく減少して推移していることが分かる。一方で、「情報通信業」では6月以降は前年を上回って推移している。従業者規模が「30~99 人」の区分では、「宿泊業, 飲食サービス業」において、前年同月比で大きく減少している状況が見て取れる。
続いて、企業の人材確保の状況について見ていく。
第 1-1-59 図及び第 1-1-60 図は、従業者規模別に見た大卒予定者の求人数及び就職希望者数の推移である。
まず、従業者数300人以上の企業では、就職希望者数が減少したものの、求人数も減少したため、2021 年卒においても求人倍率は1倍を下回る状態が続いた。従業者数 299 人以下の企業では、求人数が減少した一方で、就職希望者数が大幅に増加したことによって、求人倍率は 2020 年卒の 8.6 倍から 2021 年卒の 3.4 倍に大きく低下した。依然として、求人数が就職希望者数を上回る状態は続いているものの、人手不足の課題を抱える中小企業にとっては、大卒の人材を確保しやすい状況に移りつつあると考えられる。
第 1-1-61 図は、各年上半期の転職者数の推移について、前職と現職をそれぞれ中小企業と大企業に分けて示したものである。
これを見ると、2020 年上半期はいずれも前年より転職者数が減少していることが分かる。
ここからは、取引条件改善状況調査(注)の結果を用いて、中小企業の雇用状況について見ていく。
(注)アンケートの詳細については、本章の脚注2、3を参照されたい。
※脚注2: (株)帝国データバンク「取引条件改善状況調査」
(株)帝国データバンクが 2020 年9月に、全国 66,600 社(うち発注側事業者 6,400 社、受注側事業者 60,200 社)の企業を対象にアンケート調査を実施(有効回答 26,737 件(うち発注側事業者 2,467 件、受注側事業者 24,270 件)、回収率 40.1%(うち発注側事業者 38.5%、受注側事業者 40.3%))。
※脚注3: 業種別の分析に当たっては、アンケート調査において事業者が選択した業種を以下のようにグルーピングして分析を実施している。
・「製造業」:食料品製造業、繊維産業、紙・紙加工品産業、印刷業、石油・化学産業、鉄鋼産業、素形材産業、建設機械産業、産業機械産業、工作機械産業、半導体・半導体製造装置産業、電機・情報通信機器産業、自動車産業、その他製造業
・「サービス業」:放送コンテンツ産業、アニメーション制作業、情報サービス産業、トラック運送業・倉庫業、広告産業、技術サービス産業、警備業、その他サービス業
・「その他」:建設業、卸売業、小売業、金融業、その他
第 1-1-62 図は、業種別に人員の過不足状況を確認したものである。
これを見ると、「サービス業」において人員が「不足」と回答した企業が約5割と、相対的に多くなっている。「製造業」では人員が「不足」している企業が3割程度存在する一方で、「過剰」となっている企業も1割程度存在している。
また、人員の過不足状況を従業員規模別に見たものが第 1-1-63 図である。
これを見ると、従業員規模が大きい企業ほど、人員が「不足」している企業の割合及び「過剰」となっている企業の割合が共に高くなる傾向があり、人員を適正な水準に維持することが難しい状況が見て取れる。
第 1-1-64 図は、直近1年間の売上高の動向別に、人員の過不足状況を見たものである。
これを見ると、直近1年間の売上高が「増加」した企業で、人員が「不足」していると回答した企業の割合が高く、業績が拡大基調にある企業ほど人手不足の状況にあることが分かる。
第 1-1-65 図は、業種別に人員が不足している職種の状況を見たものである。
これを見ると、「製造業」では「現場職」と回答した企業の割合が7割程度となっており、工場や店舗などでの働き手が特に不足していることが分かる。また、「サービス業」では「技術職(設計、システムエンジニア、デザイナー、運転手などの専門職)」が不足しているとする企業が7割程度と最も高くなっている。
第 1-1-66 図は、業種別に人員不足による影響を確認したものである。
これを見ると、「サービス業」、「その他」において、「売上機会の逸失」と回答した企業の割合が最も高くなっている。「製造業」においては、「残業時間の増大」と回答する企業の割合が最も高く、「納期遅れなどのトラブル」と回答した企業の割合も相対的に高い。
続いて、業種別に人員過剰となっている職種の状況について見たものが第 1-1-67図である。
これを見ると、「製造業」では「現場職」が過剰であると回答する企業の割合が8割以上となっている。また、「サービス業」では「技術職」が過剰と回答する企業の割合が相対的に高い。
第 1-1-68 図は、業種別に人員過剰への対応方法について確認したものである。
これを見ると、いずれの業種においても「雇用関係の助成金の活用」と回答する企業の割合が最も高くなっている。また、「新規採用の抑制」、「休業日を設定」、「残業時間の削減」と回答する企業の割合が相対的に高い一方で、「人員の削減」と回答した企業は1割程度にとどまっており、人員過剰の中でも雇用を維持しようとする企業が多いことが分かる。
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コロナの影響も踏まえた、中小企業の雇用状況です。
人手不足感は、2020年第2四半期にいったん緩和したものの、全体では引き続き人手不足感があるようです。
2020年4月以降、従業者規模が99人までの企業で雇用者数が前年よりも大きく減少しています。
特に宿泊業、飲食サービス業で前年同月比で大きく減少しています。
大卒予定者の求人倍率は、従業者数299人以下の企業で2020年卒の8.6倍から2021年卒の3.4倍と大きく変化しています。
中小企業にとっては採用のチャンスと言えそうです。
人員不足、人員過剰ともに、現場職や技術職で発生している、ということも興味深いです。工場や店舗での働き手の不足がある一方で、過剰になっている企業もあります。最近は、過剰な人員を他企業への「出向」によって調整しようという動きもありますので、そういう人事交流も盛んになりそうですね。
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