【文教堂札幌ルーシー店】アワーズバックナンバー企画の話
こんにちは。漫画家のヤマモトマナブです。2019年より月刊漫画誌ヤングキングアワーズにて「キューナナハチヨン」という、書店が舞台の漫画を連載していました。
連載と並行して、北海道の文教堂札幌ルーシー店で書店員としてアルバイト勤務もしていました(今も勤務は続けています)。コミック発売の際には、毎回「作者が働いている書店限定のキャンペーン」として色々な特典や企画を行ってきました。
今回、完結となる4巻の発売にあたって「アワーズバックナンバー企画」を開催します。その内容と経緯について読者の方々にお話できればと思い、このnoteをしたためています。よろしければお付き合いください!
文教堂札幌ルーシー店には、「キューナナハチヨン」連載当時のヤングキングアワーズが大量に残っています。これらを対象商品とし、購入いただいた方に以下の特典を差し上げます。
今回のために新たに描き下ろした8ページのモノクロ漫画です。4巻発売記念としてTwitterでプレゼント企画をやるかもしれませんが、それ以外では今のところ配布の予定も、ネット公開の予定もありません。「雑誌(しかもお古)を買っていただくならこれくらい誠意を見せなくては…!」と思って頑張って描きました。
【12/8追記】2冊購入特典、完売しました!
おかげさまで、2冊同時購入特典の「ポストカードつめあわせ」は完売となりました!ありがとうございます! 1冊購入特典の小冊子はまだご用意がありますので、引き続きよろしくお願いいたします。
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「欲しいけど札幌まで行けないよ!」という方へも一応。文教堂札幌ルーシー店は、佐川eコレクトでご自宅への商品配送も受け付けています。その際は商品代金+代引手数料+運賃(地域・重量で変化)がお客様負担となります。現状、近くに書店が無いお客様と、転〇屋さんくらいしかご利用のないサービスです。笑
今回販売するバックナンバーも、店舗にご連絡いただければ特典付きで配送させていただきます。先述の通り手数料と運賃がかかるので、遠くにお住まいで、負担分を差し引いても特典がほしい!と思ってくれる方がいましたら、ご検討ください。
以上が企画の内容です。興味がありましたら、コミック4巻の発売(北海道は12月2日)以降に文教堂札幌ルーシー店を覗いてみてください!
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この先は企画説明ではなく蛇足になりますが、「何故バックナンバー企画を行うことになったのか」お話ししたいと思います。その理由は先程述べた通り…
当店には!ヤングキングアワーズが!!大量に残っているんです!!!
多くの本屋さんは「委託販売制度」を主とした経営をしています。簡単に言うと「売れ残った本を出版社に返すとその分のお金が戻ってくる」ということです。
一般的な小売業の仕入れは「委託」ではなく「買い切り」で行われます。売れ残ってしまった分はそのまま、お店の赤字になります。なので、売れそうな商品を厳選して仕入れたり、少しでも赤字を減らすために売れ残った商品を割引して販売したりするんですね。
本屋さんは「売れ残った本を返せる」=「仕入れのリスクが少ない」ので、売れる商品だけを並べるのではなく、メジャーからマイナーまで幅広いジャンルの商品を用意することができるんです。この仕組みのおかげで、僕たちは本屋さんで様々な本に出逢うことができているんですね。(その代わり、割引販売はできません)
とは言え、やりたい放題やっていいわけではありません。「返本率」(仕入れた量に対する、出版社に返した量の割合)にはある程度の制限があるので、何でも大量に仕入れて売れなければ返せばいい、とはいきません。雑誌については「週刊誌は発売から45日以内」「月刊誌は60日以内」など、出版社に返すまでの期限が定められていたりします。こういったルールの中、毎月返す本と仕入れる本の遣り繰りをしているんですね。
…そう、「月刊誌は60日以内」。ヤングキングアワーズは月刊誌なので、売れ残った場合は発売から60日以内に出版社へ返すのがルールなんです。
ところが当時の店長はこう言ってくれました。
「いいよいいよ、連載してるんだから。置いとこう」
おかげさまで特設コーナーには数種類のアワーズが並び、賑やかで目を引き、一層多くのお客様に興味を持ってもらうことができました。しかし「月刊誌60日ルール」からは何人たりとも逃れることはできません。たとえその雑誌で連載を持つ漫画家であっても…。結果、当店はアワーズの在庫を大量に抱えることになったのです。
出版社に返せない、そして勝手に割引販売もできない。途中からはさすがに1~2冊だけ残して返品するようになりましたが、当初の在庫はもうどうすることもできなくなっていました。
「全部僕が買い取ります!」と言えるほどの甲斐性はありませんし、ただただ店に残る負の遺産を見ているのも心苦し過ぎる。何とか僕にできることはないだろうか…と考えた末に、企画したのが今回のキャンペーンです。
昔の本に限定特典を付けて荒稼ぎ…そう思われるかもしれませんが、決してそんなつもりはありません!
まず僕については、アワーズが売れても書店のお給料は上がりません。特典冊子は8p漫画ですが、もちろん原稿料は出ませんし、冊子の印刷代を自分で支払っているのでどちらかと言うとマイナスです。
そして書店側ですが、こちらも実は儲かりはしません。出版社に返せないバックナンバーが既に負債状態(失礼 笑)なので、いくらか赤字が減ることはあってもプラスには転じません。
販売・宣伝をバックアップしてくれた店長や、連載しながらの勤務をサポートしてくれたスタッフの皆へ少しでも報いたい。それだけでなく、やるからには買ってもらうお客様にもきちんとメリットがある内容を――。
こうお話ししてみると、この企画はつまるところチャリティーというか、クラウドファンディングというか、ふるさと納税というか……? 文教堂ルーシー店に投げ銭していただき、その返礼品として限定特典を差し上げる…こんな表現がしっくりくるような気がします。笑
もしお店に立ち寄る機会がありましたら、チラッとでもご覧いただけると嬉しいです! バックナンバーフェア以外にも、たくさんの企画や展示を用意してお待ちしています。企画について何かご質問がありましたら、このnoteのコメントや、ヤマモトのTwitterアカウントへご連絡いただいて構いません! どうぞよろしくお願いいたします!
最後に、バックナンバーフェアで展開中のアワーズを自作POPとともに紹介します。その号に載っている「キューナナハチヨン」のあらすじと、ヤマモトが特にお勧めしたい作品をピックアップしています。もし企画にご興味がありましたら、参考にしてみてくれると嬉しいです!