テレビ局を退社した。


ただ、別に辞めたい訳ではなかった。

① きっかけ

会社で犯罪者の疑いをかけられた。

待望の子供が産まれ、育児休暇を全うしていた2023年末。
社内で起こった現金盗難事件の犯人が自分ではないかという噂がちらほら上がっているのを知る。

6月に制作局から別の部署に異動したのだが、実はそれもその罰だとの噂も。

人事に窮状を訴えるも、本当の犯人を知っていたようだが、その犯人の名前が社内外に広まることを避けたがり、自分のことは傍観に徹された。
盗難被害者からも、一旦黙っといて欲しいと言われ、仕方なく従った。一旦が終わることはなかった。

不都合なことに、育休中である。
自分が犯人でないという証拠などない上に、
弁証する場もない中、噂が進行するのは当然で、
社内メールには、知らないアドレスから
「会社辞めろ」「自首しろ」「帰ってくんな」
などの心ないメールも届いた。

心身が壊れた。

せっかくの育休も、子供どころではなく、自分の療養期間になってしまった。

どこからそんな噂が出たかは分からない。
組織にいる以上、そして人に好かれにくい性格なだけに、割と仕方ないかもしれない。
ただ、
それを信じる人が普通にいることがとてもショックだった。
何も信用されていなかった。
親しい人に相談しても、半ば嘘つけと思われていたみたいだ。

退社から2ヶ月経ってもまだ夜な夜なムカついてはいる。
自分の叫び声で夜中目覚めたりしている。

ただ、信用を獲得出来て無かった自分の責任もあるにはあるのだ。
誰からも好かれるようなムーブや勤務努力、ある意味リスク管理をしておけば、こうはなってなかったはずだった。

自業自得ではある。

それは分かっているが、身体を壊してまで、周りにびくびくしてまで、この会社にすがりつく意味は、もうなかった。

② まえから


もちろんこの出来事だけで退社を決めたわけではない。

前から迷いはあった。

入社は2016年。
とにかくお笑いが好きだった自分は、
関西のお笑い芸人と何か面白い物を作りたいと考えた時に、
当時はまだテレビだと思い、入社を決めた。

運良く自分の企画する番組をいくつかやらせてもらった。

ただ、正直なところ、全くもって突き抜けることが出来なかった。
自分の中でやりたいことの純度高く作れた企画も、大して話題にもならず、自分の限界を思い知った。
好きで、得意なことをやってる癖に、凡庸だった。

関西のバラエティを引っ張ってやるくらいの当初の気持ちも薄れに薄れ、
自分が本当に面白いと思える企画が何なのかわからなくなり、自分の中でのハードルだけが上がっていき、
ただ与えられたレギュラー番組をこなしている時間があった。
自分じゃなくてもいい仕事を振られ、60点でやってしまっていた。

なので、最終酷い仕打ちを受けたとはいえ、
結局はリタイアなのだ。
淘汰されるべき人間が淘汰されたというだけなんだと思う。

③ それでも

ただ、お笑いやテレビは好きなままである。

とにかく楽しかった。

わがままを形にさせてもらっていた。

恵まれた経験だったとは思う。

総じて感謝してる。

組織がめんどくさくなり、ひとりで学習塾を始めたが、
いつも、もう一人の自分を操ってる感じがする。
魂はまだテレビにあって、体だけがふわふわと動いている感じがずっとある。

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