中小・中堅企業の海外展開/5.「隠れたチャンピオン企業」
こんにちは。公認会計士の山本です。
ところで、みなさんは「グローバルビジネスの隠れたチャンピオン企業」という本をご存知でしょうか?
この本はドイツ人の経営学者、ハーマン・サイモンという人が書いたもので、日本では2012年に出版されました。
曰く、
シンガポールのような小国は別として、それなりの規模の国同士を比べてみると、ドイツの輸出力は他を圧倒している。
一人当たりの輸出額でみると、2010年時点では、日本の約3倍、アメリカの4倍、フランスの2倍もある。
一方、大企業の数を比べると、ドイツはむしろ少ないくらいである。
著者の引用していた 2010年のフォーチュン500では、日本71社に対し、ドイツ37社。2020年でみても、日本53社に対し、ドイツ27社に過ぎない。
ここから著者は、ドイツの輸出力を支えているのは、大企業ではなく、無数の中小・中堅企業なのではないか、という推論を立て、調べてみたところ、
実際、その通りで、ドイツには、特定の分野で世界シェア上位を占める中小・中堅規模の企業が無数にあり、「全世界の中規模の世界市場リーダーの60%はドイツ語圏から出てきていると、私は推測している。」と書かれているくらいです。
そして、ここからがポイントなのですが、
それであれば、日本も同じような方向を目指すべきではないか、
ドイツ同様、ものづくり大国であり、かつ、品質で負けず劣らずのものも持っているし、
日本経済の置かれた状況を考えれば、世界で売っていかなければならないことは、誰の目にも明らかなので、
といった議論です。
そして、こうした動きを後押ししようと、経済産業省も2013年にグローバルニッチトップ企業100選という企画を実施し、昨年も同じ企画を実施しています。
しかし、果たして、それにより、日本の中小・中堅企業が海外でより多く売ることが出来るようになったか、と言えば、そういうことにはなっていないと思います。
理由は何か。
私は2つあると思っています。
一つは「隠れたチャンピオン企業」「グローバルニッチトップ企業」になるには、そうなれるだけの良い製品を作らなければならない、で、思考が停止してしまっていること。
もう一つは、統治方法の違い、というところに意識がいっていないこと。
自分たちも良いものを持っている。だから、同じようにグローバルニッチトップになれる筈。ではなく、
「隠れたチャンピオン企業」が、どのように生まれるのか、そこまで掘り下げて見ていかないと、上手くいかないのではないかと思います。
良い製品を作ることは必要条件ではあっても、十分条件ではないと思いますので。