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中小・中堅企業の海外展開/3.「グローバル人材」という発想

こんにちは。公認会計士の山本です。

前回、書きましたが、日本企業は規模の大小を問わず、海外拠点に日本人を駐在させます。そのため、人的資源の豊富な大企業なら、何処にでも拠点を設けることができますが、中堅・中小企業の場合は、そういう訳にはいきません。

人材がいないのであれば、育てればよい、若しくは、採用すればよい、ということで、多くの中堅・中小企業の経営者が「グローバル人材の育成」、「グローバル人材の確保」といったことを仰られます。即ち、日本と現地の間の言語、文化、慣習等の違いを全て適切に変換し、日本の期待する結果を現地で残してくれる人材という発想です。

一見、合理的で、当然の発想と思われますが、私は、この発想では、海外展開は上手くいかないと考えています。

なぜなら、

そもそも「グローバル人材」は育成できるのか、という疑問があるからです。言葉を習得し、現地の文化、慣習を理解し、かつ、現地人社員を管理・監督し、ビジネスを拡大していける人材を育てられるのか、という疑問です。

また、仮に「グローバル人材」が育成できるとして、人が育つまで何年かかるのか分かりませんが、それまで海外展開できない、とは、何とも悠長な話に思えます。

育成するのではなく、外から採用する、というケースも聞きますが、よく見る失敗例は、採用した人材が、会社の文化や事業の理解に欠け、日本本社とのコミュニケーションが上手くいかなかったり、海外だから、ということではなく、そもそも、何をどう売ればよいか、ということすら分かっていなかった等、「あるある」の失敗例なのではないかと思います。

更に、非常に有能な「グローバル人材」がいて、海外事業が上手くいっている場合でも、

「グローバル人材」がカバーしているエリアでは、事業を進められるが、「グローバル人材」が確保できない地域では、ビジネスを広げていけない、という制約が常に存在します。

また、その人材が辞めてしまったら、という問題もあります。

例えば、〇〇という国に進出したいと思っている社長さんがいたとします。その時、会社の外の「グローバル人材」が、私がやりましょう、と名乗り出てくれ、順調に進出できたとします。しかし、その後、その人が退職してしまったら、誰がその事業を引き継ぐのでしょう? 

他にも、例えば、海外展開に熱心な社長さんがいたとします。海外に幾つも子会社を立上げ、自ら頻繁に現地を訪れ、必要な指示を日本本社、海外子会社の双方に出し、事業を順調に発展させていたとします。

しかし、社長さんが引退してしまったら、どうなるでしょう? 私の知っているケースでは、やがて親会社は子会社で何が起こっているか、全く把握できなくなり、また、問題を解決しようにも、誰に、どのようにコミュニケーションをとれば良いのかすら分からない、といった事態に陥ってしまいました。

このように考えているため、「グローバル人材」という言葉を聞くと、そういうことを言っている間は限界があるだろうな、と、思えてしまいます。

これは「方法」の話だと思います。中国や韓国の企業は分かりませんが、少なくとも欧米企業から「グローバル人材」という言葉を聞くことはありません。ということは、「本国人を駐在させる」や「グローバル人材」という「方法」以外の「方法」がある、ということになります。

この辺に関連し、次回、なぜ、私がこのような考えを持つに至ったか、書いてみたいと思います。

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