中小・中堅企業の海外展開/7.任せ方を知らない日本企業
こんにちは。公認会計士の山本です。
このシリーズの第4回で書きましたが、私は2009年にドイツ系の事務所に入り、日本にある、ドイツの中小・中堅規模の会社の子会社の監査をするようになりました。
銀行員として上海、香港に駐在し、日本企業の海外子会社を相手にした経験がありましたので、ドイツ企業の海外子会社も、日本企業の海外子会社と同じようなものだろう、と高(たか)を括っていたのですが、
結果は、両者は似て非なるもの、という表現が相応しいのではないかと思えました。
最も大きく異なる点は、ドイツ企業の日本子会社には、ドイツ人がいない、ということです。
私が見てきた日本企業の海外子会社には、ほぼ日本人の駐在員がいましたので(この点については、シリーズ第2回に書いています。)、当然、ドイツ企業の日本子会社にも、ドイツ人が駐在しているものと思い込んでいました。
しかし、50社以上のドイツの中小・中堅企業を見てきましたが、一社として本国から派遣されてきたドイツ人が駐在している会社はありませんでした。
私は、はじめ、これは日本子会社だけのことなのではないか、と思いました。なぜなら、日本人は信用できるから、と、思ったりしたのですが、
そのうち、日本に限らず、どこの国でも、その国の現地の人間に任せていることを知るようになりました。
そこで私が次に思ったことは、
よくもまあ、これだけのお金、これだけの資産を、見ず知らずの外国人に任せられるものだ、ということでした。何億、何十億、何百億円という単位の話ですので。
確かに、海外にある子会社を現地人に任せられるなら、
本国人を派遣するよりコスト的に安く済みますし、
現地の人間が現地の方法でビジネスするなら、ビジネスが上手くいく可能性は、より高くなるのではないかと思います。
しかし、だからと言って、任せられるか、と言えば、
日本人の発想では、到底、難しいのではないかと思います。
一方、ドイツ企業は、任せることができるから、田舎にあるような小さな会社でも、普通に10社、20社、30社と海外子会社を持てているのだと思います。
日本の中小・中堅規模の会社の場合は、任せられないから、そもそも、海外に出られない。出られたとしても、中国、タイ、アメリカ辺りに3~4ヶ所、子会社を持つと、それだけで精一杯ということになる。
また、この任せ方の違いを知らないから、ドイツの「隠れたチャンピオン企業」に倣おうと始まった、日本の「グローバルニッチトップ企業」を多く輩出したいという構想も、
結局、製品の力だけでグローバルニッチトップになれる企業しか、グローバルニッチトップになれず、ドイツのように広がっていかない、ということになるのだと思います。
話は変わりますが、
夏くらいにドイツにメールを出すと、「1ヶ月くらい先まで休暇を取っています」といった内容の自動メールが返ってくることが普通に起こります。
普段の労働時間も、日本人より遥かに短いことを知っていますので、
それでいて、ドイツ人一人当たりのGDPが、日本人より遥かに高いのは納得できない気持ちになりますが、
それと同じで、企業の海外展開でも、やり方が違うと、結果が大きく違う、ということは、もっと関心が持たれてよいのではないかと思えます。