創作恋愛エッセイ#1『恋愛の掟』

先人から脈々と受け継がれる"恋愛道"の鉄の掟の一つに
「別れた相手のSNSを覗くべからず」というものがる。

これを破ると大抵の場合はロクなことにならない。新しい恋人との幸せ報告を見せつけられるか、自分に対する悪口をぶつけられるのがオチだ。

僕は今日この掟を破り、後者になった。

半年前に別れは恋人のSNSには付き合っていた当時の僕に対する不満が書かれていた。

僕はそれを見て落ち込み、怒りすら感じた。

書き込みの内容は、僕らが付き合っていた数年間は全て無駄な時間だった...と、そう捉えられるものだった。

もちろん彼女にそんなつもりはないのかもしれない。

だけど、僕はそう受け取った。

とても悲しかった。

一緒に笑い合った生活が。

何年経っても顔を赤くしていたあの甘い時間が。

繋いだ手の暖かさが。

それら全てが崩れてゆく気がした。

僕は怒りに任せて自分のSNSにそれを書こうとした。

でも、少し考え僕はスマホを置く。

今その怒りをぶつけてしまったら。

今この感情を言葉にしてしまったら。

本当に彼女との思い出が無かったことになる気がした。

せめて僕の中では綺麗な思い出のままにしたい。

そっと心の奥底にしまっておいて、
ふとした瞬間に静かに眺めたりしたい。

だからその感情を言葉にすることをやめた。

そして、僕はもう恋愛の掟を破らないと誓ったのだ。

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