やればできるじゃん。
「僕と付き合ってください」
その日、2回しか会ったことのない女性に僕は告白した。
昨年の秋、4年と少し続いた恋愛に終止符を打った僕は
マッチングアプリで次の恋を探すことに躍起になっていた。
彼女と別れた寂しさもあるけど、今まで恋愛に奥手だった自分を
変えるため、アグレッシブに行動するとを決めたのだ。
数十人の女性とマッチングし、実際に何人かの女性と会った。
でも、新しい恋愛探しは難航することになる。
こちらが良いと思った女性は1度会ったきり音信不通になるし、
向こうから好意を寄せてくれた女性は僕が気乗りしなかった。
そういうことを何回か繰り返しているうちに、なんだか疲れてしまってマッチングアプリをヤメたくなってきた。
そんな矢先、ある年上の女性とマッチングした。メッセージを始めてから2日という驚異のスピード感で会うことが決まったのだ。
待ち合わせのカフェの現れた彼女は、少しウェーブのかかった髪を肩まで伸ばし、落ち着いた格好でふんわりした雰囲気だった。
テーブル席に座る一瞬、香水だろうか少し甘い香りが鼻腔をかすめる。
そして声。落ち着いたトーンのゆったりした話し方で、彼女が穏やかな性格であることをすぐに確信した。
会話を初めてから数分、すでに彼女を好きになっていた。
その日のうちに2回目の約束を取り付け、別れた。
「次に会ったら告白しよう」
僕はそう心に決めた。
2回目の約束の日、食事をして店を出た後、2人で駅までの道を歩いた。
「今日言わなきゃ...」
僕は告白のキッカケを探した。
「またどこか食事したり、遊んだりしましょう」
彼女は軽い調子で答える。
「ね!行きたいね」
少し間を置いて僕は言う。
「できれば次は恋人として行きたいんですけど」
歩く彼女の足が止まった。
「えっ!!急に?告白?」
僕は続ける。
「僕と付き合ってください」
なおも驚く彼女は笑いながら答えた。
「ぜひ!よろしくお願いします」
こうして彼女と僕は付き合うことになった。
これで奥手な自分とはおさらばできたのだろうか。
でもまぁ、とりあえず自分を褒めてやろうと思う。
「やればできるじゃん」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?