ヒマラヤ体験記 その4
蜘蛛の話
食事後、T教授が過去のフィールドワークで泊まった宿の話をしてくれた。
ある日、T教授は1人でヒマラヤの氷河のフィールドワークを行い長い時間歩き詰めてクタクタであったそうな。
調査後、クタクタのまま、宿を探して宿泊。
フィールドワークで疲れ果てて、部屋に入ってそのままベッド倒れるようにに横たわり、天井を見上げた。
その時、手のひら程ある巨大なクモが天井に何匹もいたのだという!
驚きの光景だったようである。
ただなんと、T教授はあまりにも疲れ過ぎて、そのまま目をつむり寝てしまったとの事。
すごい度胸だ、というかどんだけ疲れてたんだよ。
というか、こんな話聞かされたら、
私も天井の蜘蛛が気になって寝れなくなるかも。。。
って思ってたら、ちゃんと寝れました。
どんだけ疲れてたんだよ、、、俺。
出発
十分な睡眠は取れたが、お腹の具合はまだ良くない。ピーピーの状態が続いている。
そんな中、登山が再出発。
次のはランタン村まで向かう。
途中、水牛が多く、道は水牛のふんだらけなエリアがあり、買ったばかりの登山靴を汚さないように歩くのに苦労した。
標高は3000mを超えて来ただろうか。
空気が薄く感じる。これまで生い茂っていた木々達もだんだん高さが低くなって来た。
森林限界に近付いているのだろう。
雲も自分達より下に見えて来た。
2時間程歩いて、途中、小さな山小屋で休憩をした。そこから、本日のゴールであるランタン村が見えた。
見えたは見えた。
それも、もうすぐに見えたが、聞いてみると、後3時間程歩くらしい。
なかなかあるな。
ランタン村は大きな村に見えた。
こんな標高の高いところにどうやってこんな村を作ったのだろう。
そんなことを考えながらあと3時間、ゴールを見つめながら歩いた。
これまでの雨がウソの様に上がり、青空が見えて来た。
ランタン村は光に照らされ、まるで極楽浄土の様に見えて来た。
あれが噂のガンダーラか。
そんな冗談か本当か分からん事を言いながら歩く。
これまでになく楽しい気分で歩く事ができたので、あっと言う間にランタン村に到着する事ができた。
ランタン村
ランタン村は高度3000m近くにある、ネパールの村である。
村民は300から500人程度いただろうか。
かなり大きな村である。3000mと言ったら富士山と変わらない標高である。こんな高山になぜこんな村があるのか分からないが、久しぶりに大きな村に来て、ホッとしている。
宿もかなり大きくしっかりしていた。
そしてなぜかこんなところにもファンタオレンジも置いてあり、
さっそく購入。
風呂上がりの牛乳のごとく、グビグビ飲んだ。
美味しい、こんな幸せを感じたのは久々だ。
ここは本当に極楽浄土ではなかろうか。
私がコーラよりファンタが好きになったのはこの時である。
高度順化
この村で高度順化をするそうだ。
高度順化とは、高山病対策の1つで、急激な気圧の変化に体をならす為に、数日程同じ高度に滞在する事である。
そして、つかの間の休息である。
ここへ来て天気も回復してきて、宿の前の広場ではいぬ二匹と子供たちがたわむれている。
平和だ。。
平和が訪れた。
汗と雨でビチョビチョになった服を洗濯して乾かす。
朝は快晴だが、昼を過ぎると雲が谷の下から上がって来る。
この谷をランタン谷という。
時折、下から雲が上がって来る。
こんな感覚は初めてであり、とても新鮮であった。
祭り
その日、夜になるとどこからともなく人が集まって来た。
どうやら今日はお祭りの日だったみたいだ。
男達はとある建物の中に集まって、円になって歌を歌いながら踊りだす。
私も誘われ中に入ってみると、中はギュウギュウに男達が入っていて、酸素が薄く、ムシ暑い。
そんな中、みな歌いながら楽しく踊っている。
せっかくなので、私も輪の中に入れてもらい、見様見真似で踊って歌った。すると周りにいた若者達に大笑いされた。
確かに歌も踊りも得意ではないが、そこまで笑わなくても…。
めげずに踊り続けていると、ある老人からそんなんじゃ駄目だと説教される始末。
なんかスイマセンでした。
一生懸命やったのにな…。
その後、本当に酸欠になりそうだったので、人混みをかき分けて外に出た。かなりの高山のはずではあるが、外へ出るとちゃんと酸素を感じる事ができた。
もう戻るのもイヤなので、ひっそりと宿へ帰って、その日は寝た。
体調悪化
次の日、体調があまり良くない。頭がフラフラする。
ただし、登れない程でもないので、準備をして登山に備える。
今日も、高度順化の一貫で、目的地とは違う場所へのフィールド調査を行いに行った。
氷河湖である。
氷河湖
氷河湖とは氷河から溶けた水が窪地などに溜まってできた湖の事である。
最近は温暖化の影響からか、氷河湖が拡大していたり、新しくできたりしている事もあり、定期的な調査が必要となってきている。
ここでは氷河湖の水のサンプルをいくつか採取して瓶に詰める。
私の専門外ではあったが、氷河湖に生息している微生物を調査した。
と言っても今回はサンプルを採取するだけだが。
日本に持ち帰ってから分析は行う。
ちなみに私の専門外なので、私が分析を行うわけではない。
このようなマニアックな分野の研究者は少なく、皆さん少数精鋭で行っている。
調査に関しても人手が足りない為、自分の専門外の調査でも積極的にサポートする必要がある。
2015年の地震
また、後の話にはなるが、ランタン谷は2015年の地震で大きな被害を受けており、現在復興中である。
村の半分が無くなってしまったとの話もあり、被害はかなり大きかったようだ。
亡くなった方のご冥福を祈る。
現在はかなり復興はしてきているようであり、宿泊施設も整ってきているみたいだ。
コロナが落ち着いて、ネパールへ行く機会がある方は、ぜひ訪れてあげてほしい。
それが、復興支援の形のひとつでもあるのだ。
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