見出し画像

現代の理想郷が、房総にあるらしい

※こちらは2024年6月の旅行記を今更書き起こしたものです。

いつも通り「旅に出てぇ〜」などと宣っていると、友人から“鵜原理想郷”なるスポットをオススメされた。

理想郷(𝑼𝒕𝒐𝒑𝒊𝒂)…???

もはやディストピアと化したこの現代社会において、堂々とユートピアを名乗るとは大したものである。その自信はどこから来るのか、私はその秘密を探るべく、房総の奥地へと向かった。

勝浦へ

特急わかしお5号に乗り込んで、まずは鵜原のお隣・勝浦へ。だんだんと視界に占める緑が多くなっていくことで、旅に出たんだという実感と、それに伴う高揚感が生まれた。

車窓には鮮やかな緑
勝浦駅。ゆったりとした時間が流れる

勝浦駅に到着。ここからはノープランで行動すると決めていた。(ノープランで行動するというのはプランの内に入るのか?)

とりあえず勝浦市街を回りつつ、南端に公園があるらしいので、そこまで行ってみようと思った。

ちょうど紫陽花の咲き誇る時期

まさに港町といった雰囲気。そこら中に、冷蔵輸送用の発泡スチロール箱がうず高く積まれている。

誇らしげに船首を並べる

ここ勝浦は関東随一の避暑地として名高く、この日の最高気温は25℃。都心では30℃を超え始めたころなので、長く歩いていても暑さを感じることはなかった。風が強く吹けば肌寒さすら感じるほどである。

しばらく歩き、勝浦の南端・八幡岬公園に到着。特別な何かがあるわけではないが、三方が海に囲まれておりとても眺望がよい。これだけで来た価値があるというものだ。しばらく東屋で休息。

空も海も途方もなく広い
風が強く、波も大しけ

さすがに潮風が強すぎて髪が逆立ち肌もペタペタしてきたので、勝浦半島を一周しつつ、目的地である鵜原へと向かうことにした。森の中の一本道を歩く。

さっきまで居た八幡岬公園の遠景。昔の人はこんなところに勝浦城を建てたらしい

道中、勝浦灯台に寄った。敷地内に立ち入ることはできないが、遠くからでもその存在感は抜群。

純白の美しい灯台がそびえ立つ
川津漁港。集落と共にひっそりと佇む

ようやく勝浦市街まで戻ってきた。ここからお隣の鵜原まで歩いていくわけだが、なんとなくそういう気分だったので勝浦中央海水浴場でまた小休止。さざ波の音と相対することにした。

両足を投げ出して海の音に耳を傾ける。まさしく"海"を浴びているので、これも海水浴である
こういう宣材写真みたいなやつやってみたかった。このためにわざわざ未開封のポカリを準備

満足したので、今度こそ鵜原を目指し歩く。

アクロバティック歩道
奇岩・尾名浦のめがね岩。いわゆる海蝕洞と呼ばれる類のものである
手彫りのトンネル。もはや洞窟という気分だが舗装はきちんとしている

理想郷に潜入

鵜原に到着!ここが理想郷の入り口らしいが…

ここで合ってます?

本当にこの先に我々の夢見る理想郷が存在するのか、一抹の不安を抱えつつも進んでみる。

ハイキングか登山かで言ったら登山
もはや芸術作品のような風食岩
野生のキョン。近隣の行川アイランドから脱走したものが房総半島に定着してしまったという

道中様々な出会いがあり、理想郷は私を飽きさせなかった。生い茂る草木を搔き分け、進んだ先には手弱女平(たおやめだいら)と書かれた石標。幸せの鐘があったので、ひとまず鳴らしてみる。

鐘の音が空しく響きわたる
毛戸岬からの眺望。ものすごい地層

そして、鵜原理想郷の南端部には黄昏の丘。険しくて深い森の中にある、穏やかな草原である。遠慮なく黄昏させてもらうことにした。

この眺望を独り占め

ここ鵜原理想郷は、その変化に富む風光明媚な環境から大正時代には別荘地開発の候補地として「理想郷」の名がついたようである。古くから文人にも愛され、かの与謝野晶子は鵜原で76首もの歌を詠んだそうだ。確かに、ここに載せきれなかった、写真に残しきれなかった小さな驚きが、ここではたくさん見つかったように思う。

鵜原理想郷を離れ、下山していくと、左手に美しい海岸が現れた。

日が傾き始め、海を照らしている

鵜原理想郷ハイキングの終着点が、ここ鵜原海水浴場だそうだ。日本の渚百選にも選出された鵜原・守谷海岸が一望できる。

シンボリックな鳥居と海

一日中房総の自然を堪能したところで、帰路に就くべく鵜原駅に向かう。

鵜原駅

この時の自分は何を思ったか来た電車に何となく飛び乗ってしまったので、それが逆方面の電車であると気づいたのは終点・安房鴨川に着いた後であった。

呑気に写真撮っている場合ではなかった

というわけで、なぜか時間と運賃を余分に使って夜闇の房総半島を一周してしまったというわけだ。電車の行き先はしっかり確認しよう。


結果として、鵜原には確かに理想郷があった。不思議な地形、地層、豊かな動植物、そして海と空の広大さ。すべて肌で感じることができたので、疲れた時には再び訪れてみようと思う。また、房総半島にはまだ自分が知らない魅力がたくさんあるんだろうな、とも思った。

おわりに

ここまで読んでくださってありがとうございます。初めての旅行記でお見苦しいところもあったかもしれませんが、これからも細々と書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!