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Spirits of Clothing ~生地と形の話~

こんにちは、山木です。

最近の東京は20~24度付近を行ったり来たりする気温。夏の薄手のシャツを引っ張り出したかと思えば、簡単なコートを羽織って散歩に行ったりと季節のカクテル的な洋装が楽しめる時期です。

リネンのシャツに、ライトフランネルなんかのジャケットを羽織っても許される、幅を持った季節ならではの楽しみ、移り変わっていくグラデーションの楽しみは、紅葉へと移り変わっていく並木道から着想を得られるでしょう。

今回は、前回までの流れで洋装のモノのかっこよさについて語っていきます。生地と形の連関というのは、デニムとストレートシルエットが合わさったLevi's 、レース素材やシルク素材を用いたフレア感やドレープを持たせたウェディングドレスなど多岐に渡って観察できます。

私が考える洋装では、シルエットというのは作っていかなければならない形であり、体の曲線が滲み出る形ではないと考えています。イギリスの洋装に原点を取った上で、2024年の日本で着ていても誰からも”かっこいい”と認められる一点の間に線を引くためには、用いるべき生地が自然と定まってきます。

日本だけでなく、世界にも目を向けると流通している生地のニュアンスは、イタリアンチックでとことん柔らかく、滑らかで、光沢を持った生地なのです。原毛をできるだけ細くし、糸に甘く撚りあげることによって出来上がってくる生地はまさしく天女の羽衣といえます。

しかし、私はこのような生地では満足のいく形を作ることができません。天女の羽衣は軽やかさが極大点にいったことで重力に逆らいました。だからと言って、現実問題そのような地に足のついていない生地でできた洋装では、男性の持つ大地に根を下ろしたかのような構築感は表現することはできません。

私がこだわる生地の質感というのは、絶対的にハリがあり、コシがあり、縄文杉のように、長きにわたって、過酷な環境に耐えに耐えた羊毛の堅牢さと存在感を伴ったものです。根っこが強固であればあるほど、その造形物には構築感が生まれてくることは植物を観察すればわかることでしょう。

木と同じです。

こういったニュアンスを伴った生地でなければいい洋装はつくれないと思います。仕立て屋が思い通りに優雅で重厚感を漂わせたドレープ、シルエット、動いた際のゆらめきを表現するためには。またそのような全体の表現がうまくまとまった際には、自然界において長年かけて生み出されてきた鍾乳洞や大樹、山頂からの眺めのような息も言葉も飲み込む圧倒的なモノが現れるでしょう。

まだまだ洋装という山を登り始めた私ですが、道中の景色もさまざまに楽しみつつ、さまざまな生地や人と触れ合いながら先ほどのようなシルエットを求めていきたい、いや求めていかなければならないと思えています。

要は、”いい”生地というのは、”いい”洋装を仕立てる際には自ずと定まってくるということです。おそらく他のテイラーもここまでしっかりと考えてものを作られていると思うので、たくさん吸収していきたいですね。

最後は謎の決意表明になってしまいましたが、今回もお読みいただきありがとうございました。

山木でした!


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