「ユリガッシーン!」 第2話

〇羽田家・外観(夜)
   民家である。
 
〇同・小百合の部屋(夜)
   小百合がパジャマ姿でクッションを持ってベッドで寝転がっている。
小百合「大変な1日だったな」
小百合M「将来の彼氏に上げるはずだったファーストキスが。同性ならセーフって理論もあるし。いや、それ以上に告白か。なんて返せば」
悶々と千春の事を考える小百合。
小百合M「百合が好き、要は私の事が好きっ
て事よね、あの子、花澤さん、か」
   小百合、反対側にごろんと転がる。
   小百合、クッションを投げる。
小百合M「わっかんないよ!女の子同士の好きなんて!なんで私の事好きなんて言うんだよ!小百合が好きって!」
   唇をさする小百合。時間を携帯で確認すると22時を指していた。
小百合M「もう花澤さんについて2時間近く考えてる事になるのか」
   千春の顔が頭をよぎる小百合。
小百合M「あれって告白って事でいいんだよね?だったら早く答えをあげなきゃ、な」
   千春のハンカチを持つ小百合。
小百合M「お嬢様だもんね」
   ハンカチの匂いを嗅ぐ小百合。
小百合「やっぱりお嬢様だ。良い匂い」
小百合M「(匂いを嗅ぎながら)やっぱり女の子同士って私には分からないかな。ちゃんとごめん!って言わないと」
 
〇花澤家・外観(夜)
   豪邸である。
 
〇同・千春の部屋(夜)
   千春がパジャマ姿で大きいベッドで転がって百合漫画を読んでいる。
千春「さいっこうですわ!」
   どんどん百合漫画を読み進めていく千春。
千春「この漫画の主人公たちも今日の私の様な気分だったのかしら!百合っ
 てあんな気分なんですのね!百合って最高ですわ!」
   百合漫画を抱きしめる千春。
   バラバラの台本を見つめる千春。
千春M「(ニヤニヤしながら)いい方とも出会えましたし」
   千春、ハッとする。
千春「そう言えばあの方の名前を聞いてませんでしたわ。しまった!来てくれるのに演目のネタバレを!百合が!性癖が!バレて!」
   笑う千春。
千春M「きっとそんな事些細な事ですわ」
千春「明日もいい日になりますように」
 
〇大山高校・2年1組・外観
 
〇同・同・内
   小百合と遥が喋っている。
遥「そういや山崎はどうしたの?」
小百合「振ったに決まってんじゃん」
遥「今の彼氏振ってくっつけば?今の彼氏より絶対スペックいいって」
小百合「あいつ占いで私に告白しにきたんでしょ?赤い服着てる人に告白す
 ればうまくいくって。そんな奴とは付き合いません。私の運命は私が決め
 る!」
遥「なるほど。意志が固いことで。後悔しても知らないよ?」
小百合「あ、花澤さんの事なんだけどさ」
遥「どうしたの?」
小百合「告白されちゃって」
遥「はい?」
小百合「こっちの話!気にしないで!どんな子なの?」
遥「脚本家とか演出家になりたくて色々頑張ってる、かな?近い内に留学するらしいよ?」
小百合「へぇ、そうなんだ、留学、か」
小百合M「やっぱお嬢様なんだ」
遥「だからずっと孤独に勉強してるんだって。近寄りがたい空気あったじゃ
 ん?」
小百合M「その割には大胆な告白だった様な?」
遥「それより昨日さ、変な騒動あったじゃん?」
小百合「う、うん」
遥「私見ちゃったんだよね。2人の魔法少女が戦う姿を!ゴリラになりなが
 らだけど」
小百合「ふ、ふぅん」
   冷や汗を流し始める小百合。
遥「あの人、かっこよかったなぁ」
小百合M「間違っても私たちだなんて言えないなぁ……」
遥「でもあんたが花澤さんに興味持つなんてねぇ」
小百合「え?」
小百合M「やっぱり人気者なのかな?」
遥「麗しき高嶺の花と野生を駆け回る雑草、両極端じゃん?」
小百合「ちょ、それってどういう意味?」
   遥を睨みつける小百合。
遥「(笑いながら)ごめんごめん、花澤さんは2組じゃなかったかな?早く
 しないと昼休み終わっちゃうよ?」
小百合「ありがとう、行ってみる」
遥「気を付けるんだよ~」
遥「(にやにやしながら)なんか面白い事になってきたするぞ~」
 
〇同・2年2組・外観
 
〇同・同・内
   自席で台本に書き込んでいる千春。
   小百合が物凄い勢いで千春の前に出てくる。
千春「あら、あなたは、昨日の?」
小百合「花澤さん、だよね?」
千春「ええ。私は花澤千春ですが?それが何か?」
小百合「放課後、花園公園に来て!」
千春「え、ええ?」
   驚く千春。
小百合「待ってるから!」
   小百合、足早に去っていく。
千春「また名前聞き忘れましたわ。花園公園、ですか」
 
〇花園公園(夕)
   カップルで賑わっており、小さな湖ではカップルがアヒルの乗り物に乗っている。
   ポツンと小百合が立っている。
小百合M「(頭を抱えて)しまったぁ!ここがこんなカップルスポットにな
 ってるとは!昔来た以来だから知らなかったぁ!ここで振るのか私ぃ!鬼
 か!悪魔か!」
小百合「最悪だ」
   下を向く小百合。
   千春がやってくる。
千春「何が最悪なんですの?」
   小百合、顔を上げて千春に気づく。
小百合「は、花澤さん!?」
   驚く小百合。
千春「はい、私は花澤千春ですが?」
小百合「あ、いや、そうなんだけどさ」
千春「ここは昔から平和な場所ですわね」
小百合「え、あ、うん、そうだね」
小百合M「昔から知ってるんだ」
千春「私ここにきて休憩するのが大好きですの。勉強なんかの気持ちをリラックスするには適切な場所なんですよ?」
   小百合、冷や汗を流す。
小百合M「こ、断りづらい……!そんな大切な場所だったのか!そんな場所で振るなんて出来っこないって!」
   首を振る小百合。
小百合M「でも受け取った気持ちにはちゃんと答えないと!」
   生唾を飲む小百合。
小百合「あのね!花澤さん!昨日の告白の事なんだけど!」
   小百合、頭を下げて
小百合「ごめん!」
男の声「なんだこれ~!」
女の声「なんなのよこれ~」
小百合M「ショック受けてるだろうなぁ」
   頭を上げる小百合。
   別の方向を見ている千春。
小百合「は、花澤さん?」
千春「見てください!さっきまで男女カップルだったのに男同士、女の子同
 士のカップルに強制的にくっついてるんです!パズルを組み替えるよう
 に!」
小百合「は、はい?何を言ってるの?」
   小百合が見渡すと千春の言う通りになっている。
小百合「本当だ……。一体どういう?」
CPジヘンの声「シピシピ!」
   CPジヘンが現れる。
CPジヘン「この公園を同性カップルばかり
にしてやったシピシピ!」
小百合「迷惑団の!」
千春「今回はどんな悪さを!」
CPジヘン「なんでくっついてないシピシピ?そうか!お前らもうくっついてるシピね?いいカップリングシピよ!もっとくっつくシピ!」
千春「違いますわ!」
   グサッと心臓に矢が刺さる小百合。
小百合M「違うの?いや、そうなんだけどさ。バッサリ言われると傷つくなぁ……」
CPジヘン「まぁいいシピ!そこで大人しくしとけシピシピ!おい聞け!お前ら!」
   CPジヘン、スイッチを取り出す。
CPジヘン「3分以内に隣り合ったカップリングとキスしないとこのスイッチを押してみんな爆発しちゃうシピ!」
小百合「なんだって!」
千春「どうしてそんなことを!」
   笑うCPジヘン。
CPジヘン「異性カップルより同性カップルの方が尊いシピ。男は男と、女は女とくっつくのが1番平和シピ!至高の愛シピ!」
千春「それは違いますわ!」
CPジヘン「なんだと!」
千春「愛とは、汚く儚く脆いものですわ!」
小百合「え?」
千春「だからこそ育むのです。信じあったパートナーと!どのような愛も等
 しく尊いのです!愛に同性も異性も種族も関係ありません!そうして綺麗
 な愛になっていくのです!他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んだ
 方がいいですわ!」
小百合M「確かに花澤さんの言う通りだ」
小百合「愛を邪魔するなんて下劣にも及ぶ行為!愛に貴賤はない!誰かに決
 められた愛なんて所詮諸刃の剣!」
CPジヘン「何言ってるシピか!生意気な!」
上空からポップルが現れる。
小百合「ポップル!」
ポップル「遅れて申し訳ないっプル!奴はカップリングジヘン。通称CPジ
 ヘン。様々な場所で自分の好みのカップリングに変える迷惑極まりないジ
 ヘンっプル!ユリガッシーンになってやっつけるっプル!」
千春「分かりましたわ!」
小百合M「彼氏とのキスのはずなのに!」
   目を瞑ってキス顔をする千春。
小百合M「改めて見ると端正な顔立ちしてるなぁ。まつげ長!唇プルプル!
 女優さんみたいだ!私とは何もかも違う……。というか昨日のハンカチと
 同じ匂いがする。匂い?香り?ドキドキしてきた……!」
ポップル「どうしたっプル?」
小百合M「これから振る相手とまたキスなんてしたらまた期待させてしま
 う……!でも……!」
千春「早くしませんと!爆発が!」
小百合M「私のキス、そこに愛はあるのか?これから振る女の子に愛を捧げ
 る事なんかできるのか?私のキスは花澤さんの唇に値するのか?」
   小百合、首を横に振る。
小百合M「花澤さんだって好きって言ってくれたんだ、私だって好きにならないと!」
   生唾を飲み込む小百合。
   小百合から千春にキスをする。
小百合M「と、とろける!」
   ユリガッシーンに変身する小百合と千春。
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#漫画原作部門

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