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動物病院、”奥の部屋”での検査・処置

動物病院で行われる検査や処置が飼い主さんの目の前ではなく、別の部屋で行われることについて。

「不安・不満、疑問の原因」になるだろうな…と感じます。

飼い主さんにとって、「“うちの子”の安全や、検査・処置の必要性」について、
心配になるのは自然です。

動物病院がこのようなスタイルをとるのは、いくつかの理由があります。

動物のストレス軽減:

飼い主さんと一緒の時には落ち着かない、または逆に過剰に興奮することがあります。
これにより検査や処置が難しくなる場合があります。

より落ち着いて処置を受けることができる場合があります。

専門的な環境と機器:

特定の検査や処置には特別な機器や環境が必要です。
これらは診察室ではなく、病院内の別のエリアに設置されていることも多いです。

効率と安全性の向上:


対面での処置は、安全性の面でも問題が生じることがあります。
別の部屋での処置により、獣医師やスタッフはより効率的に、そして安全に作業を進めることができます。

衛生的な問題:


特定の処置や検査は無菌的な作業を要求されることがあります。
これは一般の診察室ではできない場合があります。

飼い主の感情的な影響:


一部の飼い主さんは、処置を受ける様子を見ることによりストレス(苦痛)を感じることがあります。

このように様々な理由がありますが、いずれにしても、飼い主さんの不安を理解し、適切なコミュニケーションを行うことは重要です。

獣医師は、なぜそのような処置方法を取るのかを飼い主さんに説明し、不安を和らげる努力が必要です。

また、可能な場合は飼い主の立ち会いを認めるなど、状況に応じた対応をすることも考慮されるべきです。

第1章: 不安な始まり


春の柔らかな日差しが窓越しに照りつける、東京の静かな郊外。小池由美子さんは、16歳になる愛猫ミーコを腕に抱きながら、いつもの動物病院へと足を運んでいた。ミーコは最近、水をたくさん飲むようになり、何度もトイレに駆け込む。膀胱炎かもしれないと心配していた。

病院のドアを開けると、そこはいつも通りの安心感に包まれていた。壁に飾られた動物たちの写真、優しい色使いのインテリア、そして穏やかなBGM。受付では若い女性スタッフ、吉岡さんが微笑みながら「こんにちは」と迎えてくれた。

「ミーコちゃん、今日はどうしたの?」吉岡さんの声に、ミーコは小さく鳴いた。

問診が終わり、検査・治療のためにミーコを預ける。
少しの間、待合室で雑誌をめくるが、心ここにあらず。その間、ミーコは奥の部屋でどんな処置を受けているのか。疑問が頭をよぎる。

お会計の時間。吉岡さんが明細書を手渡す。一瞥すると、その金額に由美子さんは目を疑った。思っていたよりもずっと高額だった。「エコー検査、尿検査、細胞診、皮下点滴、抗生物質、止血剤、消炎剤…」と心の中でつぶやきながら、項目を眺める。

これらの処置がどのように行われたのか、疑念も膨らむ。

待合室は静かで、時折他の動物たちの声が聞こえる。由美子さんはミーコを抱きしめる手に力を込めた。ミーコはその手の中で小さく鳴き、由美子さんの不安を察したかのように見えた。

その時、院長の田中先生が現れ、由美子さんに話しかけてきた。
「小池さん、何かご心配なことがありましたか?」

由美子さんは一瞬躊躇ったが、田中先生の温かい眼差しに勇気づけられ、自分の不安を正直に伝えることにした。
「実は、ミーコの治療でこんなに…」と言葉をつなげる由美子さん。
田中先生は真剣な表情で耳を傾けていた。

由美子さんの心には、ミーコへの深い愛情と、病院への不安が交錯していた。この病院を信じてもいいのだろうか。ミーコのために、最善の選択をしたい。

由美子さんの心は揺れ動いていた。

(つづく)

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山本健二(Kenji Yamamoto, 獣医師やまけん)
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