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夏休みもあと1週間…でも自由研究がまだの人に見てほしい! 人気の土研究者おすすめの「身近な土のおもしろ実験」

土の中に隠された多くの謎をスコップ片手に掘り起こし、土と生き物たちの歩みを追ったベストセラー『大地の五億年』(藤井一至著)。 

著者の藤井一至さんに、1週間でもできる、夏休みの自由研究にぴったりな土を使った実験を教えていただきました。

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インドネシア・東カリマンタン州で調査中の著者(右)。フタバガキの巨大な板根とともに。(ヤマケイ文庫『大地の五億年』より)

◎今からでも間に合う!科学実験

8月、子どもたちは夏休みですね。ラジオ体操と高校野球の観戦の日課をこなすことに満足し、手付かずの自由研究に大あわてした苦い記憶がよみがえります。

自由研究という名の義務に悩み、親からの口出しやインターネットの膨大な情報に翻弄(ほんろう)され、自由研究から「自由」が失われつつあります。そこで、身近な土でできる自由研究を考えてみました。

セミの鳴く雑木林に一歩踏み込めば、つんと鼻をつくにおいがします。汗だくのTシャツ、樹液とともににおうのは、腐葉土のカビ臭です。マツタケの香り物質と同じ化学式であるにもかかわらず、よいニオイとはいえません。

でも、カビ臭は、カブトムシのすみかを教えてくれます。カブトムシのすむ腐葉土はカビのすみかでもあるからです。菌類の出すにおい物質は、シロアリなど他の昆虫を呼び寄せ、一緒に木を分解しているという説もあります。

もとの植物や土の違いによって、においも違ってきます。生きている植物の葉や根からは、さわやかなレモンの香り(リモネン)、沼地からはヘドロ臭。同じ植物でも、腐ることでずいぶん違ったにおいに変化します。

におい物質は、微生物が縄張り争いで使う化学兵器や“オナラ”(揮発性代謝物質)です。微生物の活発な夏の土からはいろいろなにおいがしますが、冬の土はあまりにおいません。

※以下の実験は、ご自宅の庭または持ち主の許可を得た場所で行ってください。

◎土のにおい実験

たとえば、冷蔵庫に土を入れて数日おくと、においはなくなるでしょうか?
目隠しをして家族何人かでにおいを嗅いで比較すれば、立派な実験(官能試験)になります。高度な分析機器とくらべるとアナログな方法に思えますが、私たちの鼻のほうが、低濃度でもにおいを感知することができます。

◇実験の方法
1)土を採取します。量は、スコップに軽く1杯くらいが目安です。雨が降った翌日は、生物活動が活発でにおいも強いのでおすすめですよ。
2)だいたい1週間くらい、冷蔵庫と屋外に置いてにおいの変化をくらべてみましょう。

「大地の香り」を意味するゲオスミンというにおい物質があります。このガスを出す細菌は、水浸しの土で増殖します。砂漠のラクダは、このにおいの先に水があることを知っています。この細菌は、オアシスでこのにおい物質を出してラクダをおびき寄せ、子孫(胞子)を遠くに運んでもらいます。

ラクダのように、土を嗅ぎ分けられるようになりたいものです。

◎ミミズおびき寄せ実験

子どものいるご家庭では、納豆のカラシが余りがちになりませんか? それを水に溶かして土に流し込むと…地中性のミミズがぞろぞろ地上に出てきます。

◇実験の方法
1)カラシ10グラム(納豆のカラシで10袋くらい)を1リットルの水に溶かします。
2)地面に20cm×20cmのように面積を決めて、カラシ液をかけます。違う場所で実験すれば、ミミズの数の違いを比較できます。

カラシには、ミミズの嫌がる辛み成分(アリルイソチオシアネート)が入っていて、これはワサビにも含まれているので、カラシがない場合はワサビでも代用できます(この量ではミミズにダメージは残りませんが、むやみにやるのはやめましょう)。

ミミズは、腐植の多い黒い土を好む傾向があります。辛みを持つ他のスパイス、豆板醤、ニンニクや大根おろしなら、どうなるでしょう? そもそも水なら? など、好奇心は尽きません。

独創的で新奇的、かつ夏休みの間に終わる研究なんて都合の良い話はそうありませんが、身近な土にも研究するタネがいくつも埋もれています。

*この記事は書きおろしです