【読書感想文】日本が世界に挑んだ時代を生きた三人の男たち。彼らの夢や情熱、友情や恋愛を描く感動作『坂の上の雲 (一)』
明治維新から日露戦争までの日本の歩みを、松山出身の三人の若者を主人公にして描いた歴史大河小説シリーズ。三人の若者とは、陸軍の騎兵部隊の創設者である秋山好古、海軍の海戦戦術の開拓者である秋山真之、そして俳句や短歌の近代化を目指し自らも優れた作品を残した俳人の正岡子規です。彼らは、新しい時代に生まれ、国家の興亡を胸に、それぞれの分野で活躍しました。第1巻では、彼らの青春時代を中心に、日本が近代国家として成長していく過程を描いています。
本書の主要なテーマは、「変革の時代における若者たちの成長と挑戦」です。この時代の日本は、維新で近代化を遂げ、西洋列強に対抗するために、国民が一体となって強国への飛躍を目指していました。その中で、秋山兄弟や子規は、自らが国家を担う気概を持ち、その使命を疑うこともなく、政治・軍事・学問の専門分野において邁進していきました。筆者の司馬遼太郎氏は、この時代を「これほど楽天的な時代はない」と評しています。
筆者はまた、日清戦争や日露戦争などの重要な事件や戦闘を詳細に再現しただけでなく、当時の日本の政治体制や軍事戦略の長所と短所を指摘し、ロシアの社会情勢や革命運動の影響をも考察します。さらに、秋山兄弟や子規の人間性や思想を深く掘り下げ、彼らの友情や恋愛、苦悩や喜び、成功と挫折も鮮明に描写しています。歴史小説としてだけでなく、人物たちの心の動きや、時代の空気感を臨場感たっぷりに味わえるのも、本書の大きな魅力の1つです。
私はこの本を読んで、三人の若者たちの、自分の夢や理想を追い求める生き様が印象に残りました。仕事や日常の中で忘れがちな「挑戦する心」や「時代を読む眼」を、この本を通じて思い出させてもらったように感じています。歴史に興味がある人はもちろん、人間の成長や友情に感動したい人、自分の夢や目標に向かって頑張っている人にも本書をおススメします。