プリズナートレーニング(キャリステニクス)
ウェイトトレーニングを15歳から35歳まで実践していました。
武道を始める少し前からトレーニングを始めたのは、貧弱だった身体を鍛えたいからで、この20年で55kgから最大95kgまで増やす事ができました。
沢山セット数をこなすハイボリュームトレーニングを主に、時には高強度トレーニング法を試したりしていましたが、2017年~2019年の2年間、週4~6回程度の自重トレーニングを実践してみました。
子どもが生まれた事によって、家にいる時間が増やしたかった事と、この本を見かけた事です。
片手腕立て伏せや片手懸垂、逆立ち腕立て伏せ等、身体を使った離れ技が10個に分割されたステップを順を追って進んで行く事で誰でも可能になる、という所に惹かれました。
私が2年実践した結果、プリズナートレーニングについての解説と感想をまとめてみました。
1.BIG6
プリズナートレーニングは6種目に分類され、それぞれが10ステップに分割されています。
BIG6は
プッシュアップ(腕立て伏せ)
プルアップ(懸垂)
スクワット
レッグレイズ(足上げ腹筋)
ブリッジ
ハンドスタンド(逆立ち)
の6種目で、プリズナートレーニングではこの6種目をやれば全身を余す事なく鍛えられる、と主張しています。
但し、ブリッジとハンドスタンドについては「上級者向き」で、プッシュアップ~スクワットが6STEPに到達するまではやってはいけない、と付け加えられています。
2.10STEP
各種目が10段階に分類されており、例えばプッシュアップは最初は壁に手をつけての腕立て伏せ(運動経験がない女の子でも楽々できるでしょう)から始まり、最後は片手腕立て伏せに到達します。
1つのステップを上がる為には決められた回数が出来て、さらに1か月は1つのステップに注力する事が求められます。
これはウェイトトレーニングにありがちな腱や骨を痛める事がない様、ゆっくりとステップアップする事が求められる為です。
3.プリズナートレーニングの効果1:怪我防止・古傷の治癒
プリズナートレーニング標は筋肥大のみを目的としたものではありません。
怪我のない、健康的な身体作り、です。
確かに私も長年ジムに通っていますが、ヘヴィなトレーニーで怪我がない人の方が少ないくらいです。
ヘヴィスクワットで膝を壊す人
ベンチプレスで肘・肩を壊す人
デッドリフトで腰を壊す人
大体が関節にテープやバンテージを巻いて実践します。
実際私も長年のウェイトトレーニングで左肩と両肘、そして左膝を痛めていて、だましだましやっていました。
しかし2年間のプリズナートレーニングの間に肩と肘は痛みがなくなり、膝もほぼ痛みが無くなりました。
また、ブリッジをする様になってから腰痛も無縁になってきました。
一時的に特定の部位にかかる負荷が下がって休養になった事と、軽い負荷で大きな動作を繰り返す事でストレッチになり、回復に繋がったという事も有るでしょう。
(本書でも慢性的な痛みは無理のない大きな動作で回復に向かう事が論じられています)
4.プリズナートレーニングの効果2:体幹の強化
ワンハンドプッシュアップ(片手腕立て伏せ)やハンギングレッグレイズ(鉄棒にぶら下がっての足上げ腹筋)等を実践するには、大胸筋や腹直筋だけではなく、握力を始め全身の筋力が必要になります。
ワンハンドプッシュアップを最初に実践した時に一番筋肉痛になったのは腹筋でした。
不安定な姿勢でもバランスよく身体を保つ為には細かな全身の筋肉を鍛える必要があるのでしょう。
2年実践した結果、L字懸垂など、これまでやろうとも思わなかった動きも可能になりました。
5.プリズナートレーニングの効果3:時間短縮
ジムに行くには結構手間がかかります。
着替えを用意→ジムまで行く→着替える→マシンまで行く→(マシンが空いてなかったら待つまたはメニューを変える)→トレーニング!→ストレッチ→シャワーを浴びる→家まで帰る
とこうなりますが、プリズナートレーニングなら
服を脱ぐ→トレーニング→ストレッチ→シャワーを浴びる
とこれで済みます。
また、コンパウンド種目(複数の関節を動かす種目)をメインで行う為、メニューもシンプルで済むので、トレーニング時間自体も少なくなります。
移動時間や準備も考えると時間は半分~3分の1くらいで済むのではないでしょうか。
6.プリズナートレーニングの効果4:コストダウン
本書ではプロテインやウェイトトレーニングジムは金儲け主義の手先だと断じています。
確かにどちらも決して安いものではありません。
1日90gのプロテインパウダーを摂取して、月に約3kgで、さらに月会費10,000円ほどのジムに通っていれば、月の費用は2万円程度になります。
これがプリズナートレーニングだと、ヨガマットとぶら下がれる懸垂台があれば後は費用はかからない事になります。
中には天井とか壁にぶら下がって懸垂をしている人もいるみたいですが、私は重量級ですので、素直に懸垂台を購入しました。
ちょっと目を離すと妻が洗濯物をぶら下げてしまうのが玉に瑕ですが、使用から3年、全然壊れる事なく使う事ができています。
ヨガマットは、無ければ布団などでも代用できますが、あるに越したことはありません。
板の間等、硬い地面だと怪我に繋がる可能性があるので、柔らかいものは引いておいた方が良いでしょう。
さて、良い事ばかり書いていますが、プリズナートレーニングが全てにおいてウェイトトレーニングに勝るかといえばそうでもありません。
当然、問題点もあります。
7.プリズナートレーニングの問題点1:筋肥大し辛い
そもそも目的が違うじゃないか、とも言えますが、単純なバルクアップならウェイトトレーニングの方が向いています。
特定の筋肉に負荷をかけたり、細かく重量を増やす、と言った事はウェイトトレーニングの得意とする所です。
最も、ゴリマッチョを目指さない人、体重制の競技をやっている人には特に問題ではないかもしれません。
ちなみに私が2年間のプリズナートレーニング実践では、体重が2kg減で、胸囲は殆ど変わらずウェストサイズだけ4cm減りました。
筋肉の維持には十分に効果を発揮する様です。
加えて、腕と肩は太くなりました。
これまで肩や腕を集中的に鍛えるトレーニングをやってこなかったのが、ハンドスタンドなどで刺激された効果でしょう。
この辺りはプリズナートレーニングの効能、というよりも刺激を変える事によるメリットかもしれません。
8.プリズナートレーニングの効果2:難しい
初期のメニューは良いのですが、大体5STEP、片腕片脚での動作が増えてくると、その姿勢を取るだけでも難しくなってきます。
クローズドプッシュアップ(掌を合わせた状態での腕立て伏せ)からアンイーブンプッシュアップ(片手をバスケットボールに乗せて、負荷をアンバランスにしての腕立て伏せ)からのハーフワンアームプッシュアップ(腕を90度曲げる片手腕立て伏せ)の辺りは、1STEP毎にかなり難易度が上がります。1つの段階クリアするのに2,3か月かかることもあります。
プリズナートレーニングでは10STEPクリアには数年かかる事も普通だ、と書かれています。長い人生をかけてクリアしていくんだから、というのが作者のポール・ウェイド氏のお言葉です。
それは確かにそうなんですが、長年の懲役ならまだしも、社会生活をしていてこの難易度の上昇はちょっと厳しい人も多いんじゃないのかな、と思います。
勿論、この難易度が身体能力の向上に繋がるのですが・・・。
実際私も友人3名と一緒に始めましたが、2年経って続けているのは私だけで、大体が片手・片腕到達時に脱落していきました。
一方でウェイトトレーニングは重さを増やせば負荷を増やす事ができます。
本書ではこの加重の速度がそもそも人体に合っていない、怪我の源だと論じていますが・・・。
一方で、「外伝」として監獄式ボディビルと、キャリステニクスによるバルクアップに特化した本も出ています。
こちらでは、神経系トレーニングとバルクアップトレーニングは似て異なる事、バルクアップ用のキャリステニクスについて論じられています。
また、ウェイトトレーニングに行き詰ったらこちらにトライしようと考えています。
9.プリズナートレーニングの効果3:ちょっと過大広告
プロテインもウェイトトレーニングも不要と謳っていますが、本書で取り上げられてるカバドロ兄弟は、「普通にウェイトトレーニングもやっているよ」と言っています。
また、プロテインについても、私は(日本の食生活の問題かも知れませんが)必要だと思います。
ただ、筋トレはある種の信仰ともいえるので、信じて実践するのも手です。その場合は肉や魚、納豆などできちんとたんぱく質を摂る事を心掛けましょう。
10.総括
長年の痛みが消え、出来なかった事が出来る様になったという意味で、プリズナートレーニングは非常に役に立ちました。
また、先日までの緊急事態宣言中もジムが閉鎖していた為、自宅で実践できるプリズナートレーニングに助けられる事になりました。
一方で、武道というコンタクトスポーツを続けて行くにあたって、自分の体重以上の重量を扱うウェイトトレーニングも重要です。
(プリズナートレーニングでもウェイトトレーニングとの併用が論じられています)
それでも、プリズナートレーニングはトレーニング初心者から、ウェイトトレーニングに行き詰まった上級者まで様々な人にお勧めのトレーニングだと言えます。
特に筋トレ初めてやる人や、自分の身体を自由に動かせる様になりたい人にはうってつけです。
是非一度手に取ってみてください。
新しい世界が待っているかも、しれません。