しほちゃんは、ういている#16
8月31日、それは滅びの呪文。
口にしたら最後すべてが終わってしまう。今週は台風のせいで気圧の変動が激しく、しほちゃんの気分を腐敗させた。彼女はエアコンの温度を25度まで下げて、頭から毛布をすっぽりと被りiPhoneを弄り横になっていた。
学校に行きたくない。
夏休みは自堕落な生活をした為、朝起きて電車に乗る事がとても尊いように思えた。起きただけで褒めてくれる、介助ロボットがほしい。ICカードをtouchする気力すらない。朝の満員電車は乗るだけで、体力を奪われる。まるで人の生き血を吸う魔物のようだ。それに電車遅延が加わると、乗客の怒りはMAXに達し車内には怒号や不穏な空気が漂う。その空気に耐えられる自信がまるでない。お腹が痛くなる。今までどうやって生きてきたんだろう。そんな疑問を無視するかのように、今日もオレンジ色の中央線は定刻どおりにやって来る。
そんな時しほちゃんは必ず、すきな音楽のボリュームを全開にして心を閉ざしてやり過ごす。まもなく8月31日だ。やになっちゃう。