しほちゃんは、ういている#12
しほちゃんが茶髪になった。
いわゆる俗的なことを避けていた彼女は、ふつうの高校生が遊ぶような場所に行くようになった。
この間、浴衣を着て「TK」とならんで歩くしほちゃんの姿をみた。商店街の夏祭りでイカ焼きを美味しそうに食べていた。とても綺麗だけど、なんか無理だった。彼女をすごく遠くに感じてしまう。しほちゃんは、浴衣を着て男と花火にいくような人間とはちがうと思っていた。彼女は世界と戦う、高潔なうつくしい精神を備えた女の子なのだ。
ザリガニ釣りをしていた頃のしほちゃんはどこに消えてしまったのだろうか。インスタのストーリーで見た彼女は、私の夢だったのか。しほちゃんはわたしだけの特別だったのに、好まない変化をしてしまった。まるで彼女が死んでしまったみたいだ。こころが鮮やかな鋭利な刃物で切られたように、燃えるようにあつい。傷口はほっとくと、ぐちゅぐちゅして化膿する。なんとかしなければと思い、ノートを開き青色のペンで「TK」もしほちゃんもつまらない。くだらないと何度も書き殴った。軽蔑する。そう思い込むことで、じぶんを肯定しようとしたが、抑えれば抑えるほどに感情がこみ上げてくる。傷口にバンドエイドを貼るような音楽をきいたが、まるで響かない。涙がおちてノートに書いた文字のインクが滲んだ。
わたしが一番気持ち悪い。