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しほちゃんは、ういている#17

 アスファルトは熱気を帯び、地面には蝉の死体が転がっている。残暑が思いの外に厳しい。最近、しほちゃんのお気に入りの野良猫のゆうさくを見かけない。夏の猫たちは涼しそうな場所を見つけて、潜んでる。駐車場の車の下や、電車の高架下や公園の茂みの中でじっとしている。彼女はそんな猫たちを愛している。普段なら人間が一定の距離に近づくと逃げ出す猫たちも、この暑さでぐったりとしている。動きにキレがない。彼女はゆうさくのために好物の猫ごはんをナチュラルローソンで買った。このキャットフードは国産で保存料・着色料を一切使用しないと謳っている。猫も健康を気にするのだろうか。
しほちゃんはビニール袋をぶら下げてゆうさくの名前を呼んだ。

 いつも見かける、通学路の狭い路地を見ても一匹もいなかった。地面を触ると熱が伝わってくる。こんな所を裸足で歩いたら、肉球がどうにかなってしまう。みんな何処に行ってしまったのだろう。夏の暑い間は猫たちは暑い東京を離れ、集団で避暑地で優雅に暮らしているのかもしれない。そんな事を考えたら自然と口元が緩んできた。結局、ナチュラルローソンで買った猫ごはんは開封せずに家に持ち帰った。猫ごはんのパッケージに口づけをし彼女はいつの日か、ゆうさくと見つめあった日のことを、ぼんやりと思い出した。しほちゃんは会えなくても、猫たちが元気ならいいよと空に願った。君のしあわせをおもう。

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