しほちゃんは、ういている#鳴らない電話
世界的な通信障害でスマホがつかえなくなった。
Twitterもみれない。LINEもだめ。電話もメール、地図もつかえない。大切な連絡がこない。やばい、パニックになりそう。
この日は、しほちゃんと一緒に新宿で映画を見る予定だった。しかし、約束の待ち合わせ時間になっても彼女はこない。
しほちゃんは無事なのだろうか。
このままでは、どこにもいけない。一体何が起きているのだろう。駅のホームの公衆電話は普段なら、がらがらなのに長蛇の列ができている。私も、しほちゃんに電話をかける為に並んだ。一番前のスーツの男が、受話器を持ちブチ切れている。男の話が長くなりそうなので、私は諦めた。
私は彼女のいそうな場所をさがした。UFOキャッチャーのぬいぐるみ。31アイスクリーム。コンビニの休憩スペース。どこにもいない。
近くのネット喫茶に入り、Twitterにログインした。しほちゃんのアカウントを見ると近くの本屋にいるらしい。ダイレクトメッセージを送り、本屋までの地図を印刷した。
警察に道を聞きながら、その本屋にたどり着く間ずっと不安だった。スマホが通じないだけで、まるで世界から切り離されたかのようだ。心が騒つく。私はスマホの中にあるしほちゃんの写真をみて、気持ちを落ち着かせた。
泣き出したい気持ちを抑えながら、店内を探すと見覚えのあるシルエットをようやく見つけた。彼女は立ち読みに夢中になっていた。
「しほちゃん」と足早に声をかけると、彼女は「ごめん」とわらっていた。