しほちゃんは、ういている#2
しほちゃんは、落ちているものを拾うのがすきだ。じぶんが拾ったものをインスタにアップしている。セミの抜け殻。きらきら光る外国のコイン。安物の百円ライター。東京の街はいろんなものが落ちている。
放課後に拾ったライターで火をつけて彼女が遊んでいると、大きな声で生徒を威嚇する体育教師に見つかり、どこかに連れて行かれた。胸の奥のあたりがヒリヒリする。悪い予感がして、わたしは急いで二人の後を走って追いかけた。
学校の中庭で体育教師は彼女がタバコを吸っているとおもい、きつく問い詰めた。しほちゃんは、何処か遠くを見つめ弁明しなかった。わたしは、彼女が学校のゴミ拾いをしておりライターを拾ったのを見たと嘘をついた。体育教師は腕を組み「もう行っていいと」と話した。ライターは没収された。わたしと彼女は、無言で中庭をあるいた。あおあおと茂らせた木がゆれている。
しほちゃんが静かに呟いた。
「声おおきい人嫌い」
「…そうだね」
「あいつと喋りたくない」
笑いが自然にこみ上げてくる。しほちゃんも笑っている。はじめて彼女の笑顔をみた。カールした睫毛がとてもきれいで、わたしは見惚れていた。