しほちゃんは、ういている#平成最後の冬
私のクラスメイトのしほちゃんはスタバが好きだ。
彼女は新作のメニューが発表される度に、店舗に通っている。しかし、しほちゃんはスタバのメニューを注文するのが苦手だ。新作の「ピスタチオ クリスマス ツリー フラペチーノ」を注文した時も、メニューの名前を噛んでしまった。
彼女はメニューを注文する時に、極度に緊張してしまう癖がある。店員さんをみると、明らかに笑いを堪えている。その眼差しに耐えられなくなった、しほちゃんはもの凄い勢いでスタバを出た。
そんな事が何度もあるようになってから、彼女はますます注文恐怖症になってしまった。このままでは新作のメニューが、一向に食べられない。しほちゃんはなるべく、早口で注文する技をつかった。しかし、早口で注文すると店員さんは必ず首をかしげる。
彼女のうしろには順番を待つお客さんがイライラしながら、腕を組んで待っていた。
まわりの客たちは、チラチラ視線を投げて笑っている。しょうがないからイヤホンで耳栓をして、iPhoneのボリュームを最大にして対抗した。きょう買ったばかりのRADWIMPSのアルバムがやさしく聞こえる。
泣き出しそうだよ。
彼女は心の中で泣いていた。また今日も、ピスタチオ クリスマス ツリー フラペチーノが食べられない。
「‥どうして、こんなに伝わらないんだろう」
しほちゃんが注文を諦めて店を出ようとすると、リーダー風のきびきびと口調のお姉さんがのんびりと話かけてきた。
「ピスタチオ クリスマス ツリー フラペチーノでよろしいですか?」
しほちゃんは大きく頷いた。
やっと伝わった、彼女はどっと疲れた。