個人投資家の逆襲~サンスター事件
電子書籍として販売していた「個人投資家の逆襲」第3章です。
株式裁判の体験記になります。本人訴訟で逆転勝ちした思い出深い訴訟です。
第3章
サンスター事件
650円 → 840円
公開買付価格・・・650円
裁判所認定価格・・840円
事件の概要・・・MBO
私の立場・・・本人訴訟
参加人数・・・・1人
概要 強制取得を拒否した者にだけ課する「みなし配当課税」。公開買付けに応じれば無税だけど、応じない場合には、損をしていても税金がかかるという。税制を利用した強制取得に本人訴訟で立ち向かった。私としては初めての本人訴訟でのMBO事件の勝訴となった。
1. 被害者に課する税金?
平成19年2月14日、サンスターは650円での公開買付けに賛同した。公開買付者はSSA。サンスター代表取締役の金田博夫が代表者を務める会社の100%子会社がSSAである。
サンスターは、公開買付けに応じなかった株主を含めて650円で強制取得しようというのである。
当時の私は、レックス事件の申立てに向けて、会員を集めたり、弁護士と交渉をしたりしていた。レックス事件に関しては一番忙しい時期だった。
ただ、サンスターは、公開買付け直前の平成18年11月10日に、下方修正を発表していた。また、650円という価格は、サンスターの持つ純資産からみて、低すぎるように思われた。
こんなことから、私はサンスター株1,000株を買っておいた。
サンスターを買った理由はもう一つある。650円という価格の根拠である。650円という価格は、サンスターの過去6カ月間の平均価格548円に19%のプレミアムを加算した金額なのだった。
レックス事件では、6カ月平均(28万円)を下回る23万円で公開買付けがなされていた。これに対して私たちは、「6カ月平均を下回るなんて話にならないぜ」と主張しようとしていた。
そこで、こう考えたのだ。
(仮に負けても、裁判所が「6カ月平均+プレミアムとすべき」という決定をしてくれれば、それをそのまま、レックス事件で証拠として出せばいい)
勝っても負けても損にはならない、というわけだ。
ところで、敵はサンスターだけではない。思わぬところにも、敵はいるのだった。
その敵を「みなし配当課税」という。
みなし配当というのは、株式を発行会社に売却した場合に、「資本金等」を超える部分に課せられる税金である。
一般に株式に課せられる税金は、「譲渡所得税」である。これは簡単に言うと、「儲かった部分にかかる税金」だ。
ところが、株式を発行会社に売却すると、「資本金等」を超える部分に税金がかかることがある。つまり、儲かっていないのに税金がかかるのだ。
私の場合だと、サンスターの株式の購入金額が65万円。公開買付けに応じて650円で1,000株(65万円)売却すれば、利益も税金もほぼゼロである。ところが、公開買付けを拒否して、650円で全部取得された場合、儲けが出ていないのに、約6万円の税金がかかる可能性があるのだ。
これではまるで、被害届を出した人から税金をとるようなものである。
このため、ほとんどの株主は、公開買付けに応じた。
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