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ウサギはにんじんが好きとはかぎらない

次男を小学校に送っていくようになった3年前から、学校で飼っているウサギの様子を、ほぼ毎日観察している。

そして、知った。

ウサギはにんじんが好きだとはかぎらないことを。

給食室から出てくる野菜くず

小学校には給食室がある。毎日子どもたちのために美味しい給食が用意される。

そのため、給食室からは毎日たくさんの野菜くずが出る。それがウサギのエサとして利用されているのだ。もちろん、野菜くずの量は毎日一定しているわけではないので、野菜が少ない日のために、ウサギ用のペレットも用意されている。念のため。

一般的には、ウサギはにんじんが好きだと思われているようだ。小さい子にウサギの絵を描かせたら、ほぼにんじんを描き添えるのではないだろうか。

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       (にんじんを添えられたウサギのイメージ図)

小学校のウサギにも、にんじんが大量に与えられる。いつもエサの皿の中には、にんじんの皮がたっぷりと盛られている。

いや。

にんじんの皮は、いつもある。

時にはすっかり干からびて、切り干しにんじんが出来上がっている。

この子、にんじんの皮、残してるね?

キャベツは好き

給食室から出る野菜くずは、にんじんのほかにももちろん、いろんなものがある。キャベツの外葉や小松菜の根元なんかは、喜んでもぐもぐ食べているそうだ。

にんじんのヘタが混じっているときも、シャクシャクシャクシャク、食べているらしい。食べ応えがあるのがいいのかもしれない。そして、にんじんの皮だけが残っていく。にんじんの皮が、お皿にいつもてんこ盛りになっているのはそのせいだ。他に食べるものがないときだけ、仕方ないから食べている。

にんじんの皮しかお皿に入ってないときには、明らかにテンションがダダ下がりで、

「あー、また皮ばっかり。食べる気せんわー」

とでも言いたげな、アンニュイな空気を漂わせている。毛皮のせいでよく見えないが、多分眉間にしわが寄っている。

ウサギはにんじんが好きだとはかぎらないのだ。

好物はハコベ

この子の好物は、ハコベである。その辺で摘んだハコベを入れてやると、さっきまでのアンニュイな空気はどこへやら、すごい勢いで鼻をヒクヒクさせてやってくる。そして、嬉しそうにシャクシャクシャクシャク、ハコベを食べる。

実に幸せそうに食べる。

山盛りのにんじんの皮を無視して、夢中になって食べる。

つくづくこの子はにんじんの皮が嫌いなようだ。

次男の観察によると、他の草、イネ科の長い葉っぱのやつとか、甘い蜜を出すホトケノザなんかもよく食べるが、ハコベは格別に好きらしい。桜の葉っぱも「おやつ感覚」で食べるのだそうだ。授業にはあまり出ないが、妙なことは学んでいる。

ウサギはにんじんが好きとはかぎらない

ウサギはにんじんが好きだなんて、勝手なイメージ、勝手な思い込みだと、この子を見て気が付いた。

もしかしたら、世の中にはそんな思い込みがたくさん転がっているんじゃないだろうか。

山盛りのにんじんの皮を前に置かれて、困っている人がたくさんいるのかもしれない。

その人はにんじんが好きじゃないのかもしれない、と考えてみることのできる人になりたいなと、ウサギのアンニュイな顔を見ながら思った。





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