シン・ゴジラ第四形態と同様、苦難を経て登録された立体商標
シン・ゴジラ第四形態は、当初は立体商標として認められなかった
2024年10月、特許庁は東宝株式会社が出願した「シン・ゴジラ第四形態」を、立体商標として認めました。
シン・ゴジラ第四形態の立体的形状は、「縫いぐるみ、アクションフィギュア、人形 、その他のおもちゃ」の分野で、商標登録出願(商願2020-120003)されました。
しかし特許庁は、「この立体的形状は、怪獣のおもちゃ等の形状を表しているに過ぎない。特定の者に独占させるべきではない。」として、当初登録を認めませんでした。
これに対し東宝は、「この立体的形状は、東宝の映画『シン・ゴジラ』に登場する怪獣として、需要者に広く認識されている」と反論しました。
審査では東宝の主張は認められず、審判でさらに知名度を立証しても覆せず、審決取消訴訟でようやく主張が認められました。
立体商標は、平面商標よりも審査が厳しい
立体商標は、立体的な形状についての商標です。
指定商品(商標を使用する分野)との関係によっては、文字やロゴといった平面の商標よりも、「需要者が誰の商標かを認識できる」ことが審査で重要視されます。
これは、商標が半永久的な権利であり、立体的形状について何でも登録を認めると混乱を招く恐れがあるからです。
シン・ゴジラ第四形態と同様の苦難の道を経て、登録された立体商標を調べてみました。
同様の理由で拒絶後、登録になった立体商標・雪印コーヒー牛乳のパックの形状(商標登録第6681895号)
スーパーやコンビニでお馴染みの雪印のコーヒー牛乳も、カラーリングを伴うパックの形状(文字なし)が立体商標として登録されています。
指定商品は、「コーヒー入りの乳飲料」と「コーヒー」です。
特許庁は当初、「コーヒー牛乳やカフェオレ飲料であれば黄色、茶色などの色彩が主として使用されている実情」があり、商品の包装の形状を普通に表しているだけだとして、登録を認めませんでした。
これに対し雪印メグミルクは、「楕円形で商品名を囲ったデザインは、雪印コーヒーのみ」であること、「コーヒー牛乳やカフェオレ飲料を表す色彩は、茶色と白色が主に用いられていて、黄色が主として用いられている実績はない」ことを主張しました。
また、販売実績を列挙し、需要者に広く認識されていることを立証しました。
その結果、立体商標の登録が認められました。
同様の理由で拒絶後、登録になった立体商標・オムロンの体温計の形状(商標登録第6197317号)
病院でよく目にするオムロンの体温計も、オムロンの文字やロゴを省いた形状が、立体商標として登録されています。
指定商品は、「体温計」です。
特許庁は当初、「この体温計と同様、上部が丸みのある長方形で、中央部分に液晶画面が設けられ、中部から下部が先すぼまりとなっている体温計が、一般的に取引されている」ため、商品の形状を普通に表しているだけだとして、登録を認めませんでした。
これに対しオムロンは、「体温計の分野では『ペンシル型』という、全体が細長く先端の感温部が尖った形状からなるものが一般的であり、この体温計は一般的な形状とは違う」こと、「丸みのあるデザインが需要者に注目されている」ことなどを主張しました。
また、販売実績を列挙し、需要者に広く認識されていることを立証しました。
審査では主張と立証は認められなかったものの審判では認められ、立体商標として登録されました。
まとめ
誰もが知っている立体的形状であっても、指定商品との関係によっては、立体商標として認められるまでに困難を要します。
シン・ゴジラ第四形態に続いて、今後はどのような立体的形状が苦難を経て立体商標として認められるのか、目が離せません。