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読書感想文 小川哲 「嘘と正典」 マジックは演出がすべて
今日も図書館で本を借りてきてしまった。
借りだし期間の二週間は短い。この前は「国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯」を上下二巻を借りてしまった。「国家の命運は金融にあり 高橋是清の生涯」は私が図書館に入れてほしい本と要望を書いて出した本だ。入れてくれたのはいいけれど、全部は読み切れなかった。上下巻とも分厚くて最後まで読めずに、返してしまった。無念。次に挑戦しよう。
簡単に読み切れるのがいいと考えた私は、短編集にすることにした。短編集は時間が細切れでもさっと読めていい。映画で短編映画があるけれど、なんか小説の短編を読むのとはちょっと違う。なんかアート映画という感じで違う感じがする。劇場にかけるには短すぎると観客はすぐに終わるので、金返せとなるのだろう。でも短編小説はすぐに始まり、すぐに終わる。実に手軽で言い。フットワークの軽さが短編のいいところ。
短編小説にはアンソロジーもある。アンソロジーは大体はテーマみたいなものがあって、いろんな作者のものが入っていてこれも面白い。私の読んだ短編集は同じ作者の短編集だからというのもあり、同じ時期の作者のものが収録されているためか同じ気分の作品が並んでいることが多かった。確かに話としては違うんだけど、作者が同じで同じ感じのものが多かった。なんというか世界に対する態度が同じ感じがする。それで飽きてしまうことが多かった。同じ作者の者でも、さすがに長編は力が入っていて、面白いものも多かった。
今回読んだのは小川哲著「嘘と正典」だ。収録されている短編は以下の六篇が収録されている。
「魔術師」
「ひとすじの光」
「時の扉」
「ムジカ・ムンダーナ」
「最後の不良」
「嘘と正典」
小川哲はSF作家ということになるみたい。みたいというのは私もよく知らないからだ。ネットで調べると、1986年12月25日生まれ、千葉県千葉市出身。東京都在住。妻は漫画家の山本さほ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程中退。2015年『ユートロニカのこちら側』で第3回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し、作家デビューした。他の代表作に『ゲームの王国』、『嘘と正典』、『地図と拳』などがある。私がよく知らないだけで、直木賞候補にもなったようだ。
「魔術師」はタイムマシンを使った、SF作品とも読めるし、マジックの話とも読める。「魔術師」の中でマジックは演出がすべとと書いてある。小説も演出が重要なのは同じだ。タイムマシンを使った時間旅行の話は山ほどある。SF小説でも、漫画でも、映画でもたくさんある。同じ時間を何度も繰り返すタイムループ物はありふれているといってもいいだろう。「時をかける少女」はタイムループ物の古典だろう。
マジックとしてタイムマシンを使うのだが、果たして本物のタイムマシンなのか、それとも何十年という長い年月をかけたマジックなのかが判然としないところがいい。タイムマシンというSFではありきたりの装置をどう生かすかに小説はかかっている。私は面白かったし、他の人が読んでも面白いと思う。うまいとうなる。
他の作品も面白いので、隙間時間にさっと読むのをお勧めする。本というのは全部を読む必要はない。途中で読むのをやめようと構わないので、読む気になったときに読めばいい。そこが気楽なところ。ぜひ手に取ってみてほしい。