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短歌97
もうだめな夜にも遠回りをすれば寄れる本屋が聖性をもつ
信じられたいとは別に思わないラーメン屋のものすごい行列
お姉さんの思想のポスターがない頃の店内をいつか忘れていく
駅前の市場の瑪瑙お互いに思い出さない友達でいる
熱の日にだけ触れられる球体の(触れたくはない)滑らかな白
あの木まで走りさえすれば遅刻しない朝をことさらゆっくりとゆく
制服で呆けた屋上庭園はあるけれどもう制服でない
児童館職員たちの残業の明かりで道が歩きやすかった
薬の分多くの水を飲み干すも海には辿り着けない河川
同級生としてのスキンシップにどぎまぎしていたことをごめんと思う
クレーンゲームの弱々しいクレーンを弱らせたのは誰なんだよ
水晶を通じて占い師のことを明日の俺が笑かしている
声帯の蕀 あるいは僕だって姫として生きてみたかった春
NEW!ばかり選んで食べるもうあたし、NEW!あたしだから忘れていいよ
昔々の話に電車がなったときその時の手段で旅に出ようね
ポツンと一軒家のスタッフがUFOの離発着場を見つけてしまう
枯らさないよう声をかけていたのに水や肥料は知らないけれど
体温も鼓動も本当に好きな子も寄り添えば全部分かることだよ
しないキス、できないキスの数の火を吹き消すことが創世記じゃんね