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短歌91~100

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#現代短歌

短歌100

短歌100

駆け抜けた場所から野原になっていく 春を不本意な比喩にさせない

音楽や毛布やコンビニスイーツを僕は笑顔にできるだろうか

上空でコンソメスープ啜るとき平和って容易そうなのにね

屑であり星でもあった人といた季節 あたしのすばらしい汚点

ねぇコラショわたしの内部告発でようやく長い夜が明けるよ

枯れたから本当に言葉は葉っぱだったこともう誰も言えない

木漏れ日のようにあなたを守りたい法が二人を赦

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短歌97

短歌97

もうだめな夜にも遠回りをすれば寄れる本屋が聖性をもつ

信じられたいとは別に思わないラーメン屋のものすごい行列

お姉さんの思想のポスターがない頃の店内をいつか忘れていく

駅前の市場の瑪瑙お互いに思い出さない友達でいる

熱の日にだけ触れられる球体の(触れたくはない)滑らかな白

あの木まで走りさえすれば遅刻しない朝をことさらゆっくりとゆく

制服で呆けた屋上庭園はあるけれどもう制服でない

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短歌94

短歌94

生きていかなくちゃいけないって本当?嘘みたいな色の嘘の月

小さな椅子、可愛い椅子を諦めて、酩酊、きっと遠くへ行くよ

ごみ捨て場の揺りかごゆれる然るべき馬車が来るのをずっと待ってる

once more そして拍手を聴き終えてあなたの側で孵りたかった

すーとはー繰り返しながらどこでもない場所に来たことだけが分かるよ

生きていくわたしたちは基本的に怠惰であって、そういう光

指切りをしたことだ

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短歌92

短歌92

8×4 AROMA SWITCH 教室をシミュレーション仮説だと思った

泥からも生まれる命があってほしい って思わんし 雨雲レーダー

交わらない鼓動がいつか透き通る時のこと思って 水族館

水族館 きみが世界を統べるのはありかなしかで言えば憂鬱

光る海光らん海をより分けて生活をする相手を選ぶ

人々の落胆に耐性がない町の途切れない花火大会

若い宇宙 年老いた宇宙 規模感を見誤りすぎた告白だ

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