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自分の限界を見たとき、他人のことを考える

日本一の過酷なコースという新潟のスパルタンレースに出た。

標高800メートル、最大傾斜33度の急勾配コース。
最初の2キロはひたすら山登り。激坂が続く。

正直物理的にどうこうというよりはメンタルにかなりくる。
まだ続くのか、暑い。水は足りるのか。
いつまでこの坂を登るんだ?

頂上もあと何キロとかの案内もないまま登り続け、見たこともない勾配から息が上がって声も出ない。

ただ歩いてるだけなのにぜーはーしながらなんとか頂上らしき場所に辿り着く。
やっとスパルタンらしい障害物がくる。

自然界に存在しない自分の身長ほどもある壁を越える。
物理的に壁を越える経験。
これがもうやったことないし覚悟とパワーがいる。

45kgの鉄球を持って歩くなんて絶対できないと思ったけどみんながサラッとやるから一生懸命やる。意外とできる。まだ笑顔。

なんとなくこのまま行けば大丈夫そう。そんな風に思っていた。
腕だけでは登れない高さの角材を越える時にはみんなのサポートをする余裕もあった。

ロープに吊り下げられた重たい砂袋を滑車で持ち上げる障害、途中まで持ち上げた時に腕が踏ん張れなくなる。

27kgの砂袋を持って歩くとき、突然体が動かなくなる。これまでの疲労がぶわっと全身に思い出すように伝わり、言い訳が頭を駆け巡る。

これは無理だ、リタイアしよう。ここは諦めて次に行けばいい。
そう思っても途中で抜けられる場所もない。代わりに持ってくれるはずのゆーじくんも先に行ってしまった。

みんな頑張ってる。やるしかない。この苦行をやるしか選択肢はない。そう思うと不思議とできてしまう。

そしてまた山登り。
終わったと思っていた記憶が甦る。足が止まる。

完全なエネルギー不足。
血糖値が下がって吐き気がする。朝食もとらなかったからエネルギーもない。メンタルが落ちてくると動くはずの足が攣り始める。
いやまて。そんなはずはない。

歩き方も習った通り、体力的に無理なコースではない。できない理由はないのに体がまったく動こうとしない。

塩分タブレットと休憩で少し回復してもまた止まる。

弱い私が語りかける。
もうダメだ。ここでやめよう。ここまでやれたんだからいいじゃないか。だって本当に動かないんだもん。このままリタイアするんだろうなぁ。

そんな時にみんなの姿が目に浮かぶ。

前半で両足が攣ってもそこから頑張って歩いてきたつっちーの背中。

弱音を吐いていたのに始めてしまえば積極的にトライして諦めないなっちゃんの姿。

どれくらい経ったのだろう。
30分くらい山に座ってた気がする。
レースの最後尾でサポートするお兄さんがポカリをくれて「ポカリ飲むと効くよ」と本当か嘘かわからない魔法をくれる。

もう暑いのか寒いのかわからない頭に水筒の氷水をかけてくれるお姉さん。
一緒に登ってきた2人のボランティアさんに励まされながらまた前を向く。

心が弱っていて気づかなかったけど意外と上まで来ていた。
前を向くと頂上はすぐそこだった。


ゆーじくんは「じゃあ先に行ってるね」と言っていた。それは自分で来いということ。私にはできると思われているということ。

れあちゃんは絶対ゴール前で待っていてくれる。みんな早くゴールできるのに絶対待ってくれてる。そんな人たちを裏切れない。

16人全員でゴールしたい。


いつも中途半端な気がしてた。
私は何かやり切れなくて、口ではできると言っていてもどこか足りない気がしている。

憧れの人とは何かが違って、最後の最後で踏ん張りがきかない。そんな感覚があった。

弱い自分に負けたくない。
登ってきた山を今度は下りながら asobijiの黄色いTシャツを探す。あの黄色のTシャツを見れば、また元気が出る。

さっきまで太ももが攣っていたのに、嘘みたいに動けるようになってる。

少しずつ誰かの声が聞こえるようになってきた。前の集団に近づいている。誰かが私の名前を呼ぶ声が聴こえる気がした。

思えばみんな他人のことばかり気にしていた。自分がフラフラでも他人を励まして体調を気遣い、一緒に歩こうとしてくれていた。

限界を迎えた時にも他人のことを考えてしまう。人という生き物は美しいんだな、そんなことを考えていた。

あっという間にゴール地点が見えてくる。
ゴール前に見える黄色いTシャツ集団。
みんなの顔が見たい。それが私の原動力になる。

頑張り方は人それぞれでいい。
目標を持って取り組む、自分の限界を超える、タイムを競う。色んな意味づけができる。

私にとっては自分と向き合う良い時間になったとはいえ、もっとみんなの顔を見ていたかった。顔を見るにはみんなより前にいる必要がある。だから次は先頭にいたい。

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ヤマディー
ありがとうございます!先にお礼言っておきます!

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