[ゲーム雑感]Horizon zero dawn[PS4]

2020/8/8 やきとり

PS4のオープンワールドゲーム「Horizon Zero Dawn」について、プレイ開始8時間(最初の場所を出たあたり)でとりあえずの雑感を書きます。

総評★★★☆☆

総合的にはやや期待を裏切り、星5つ中、星3つという印象だ。星4つくらいを期待していたが、後述するマイナスポイントが目立って星が減った。

十分にコストがかかっており、完成度の高さを感じるものの、爽快感が無い。「映画のように綺麗」なだけでは伝えられない、ゲームならではの没入感を伝えるにあたり、失敗が見える惜しい作品だ。

雰囲気が暗い

何よりプレイのモチベーションを下げてしまうのはゲーム全体が醸し出す憂鬱さである。暗いのではなく、何だか鬱っぽいのだ。とくにメニュー画面を開く度に流れる

オオオオォオオオオオ…~

という陰鬱なサウンドが罪悪感のようなものを抱かせる。メニューを開いているだけなのに…これが反復されることで憂鬱な気分が蓄積され、じわじわとメンタルを削ってくる。

また、本作がそのように憂鬱感を演出することが狙いであるようにも思えない。「暗さ」は楽しめる一方で「憂鬱さ」は楽しめないが、製作者がその違いをわかっていないために意図せず盛り込んでしまった未熟な憂鬱感なのだ。

戦闘が遊びにくい

ある程度は難しい方が達成感や練度の高まりを味わうことが出来るが、システムやゲームバランスの調整不足による理不尽が多いと、難しさより遊びにくさを感じ取ってしまう。

本作はその見極めが微妙な所だ。多くのレビューで十分に高い評価を得ているように、完全な理不尽という程に破綻しているわけではない。スケール差のある機械の猛獣に対して弓や槍といった原始的装備を駆使して戦うコンセプトは斬新で、よく考えられたものだ。

しかし残念なことに、本来そのことを通じて経験が期待される「何か」が今一つ得られない。ちゃんと草むらに隠れて弱点に矢を当てたはずなのに、こちらは追い込まれてしまう。仕方がなく敵の追跡が無くなるまでどこまでも走り続けるか、がむしゃらに武器を振り回して事態を収拾するのだ。

おそらくこれを読むと「あなたが下手なだけなのでは?」と反論したくなるだろう。もちろんそれもあるが、自分が感じている「遊びにくさ」はプレイヤーのスキルに関係が無い、ゲームの設計上のミスだと思っている。

快適さが不十分

オープンワールドゲームはプレイ時間が長時間になることが多く、それだけに基本的なプレイ環境が快適になっていないと不快感が鬱積することになる。その点、本作はかなり頑張ってはいるのだが、どこか不十分なものを感じる。

たとえば前述の「メニュー画面を開くとBGMが変わる」こともそうだ。オープンワールドゲームは所在場所や目的地を確認することをはじめ、何かと頻繁にメニュー画面を開くことになる。その頻度を計測すると、ものの数分間でもかなりの回数開いているだろう。

それほど頻度の高い操作の度に、流れているBGMが途切れてしまうことは、プレイの継続感や没入感を損なってしまう。まるで作業中に何度も過去のトラウマがフラッシュバックされるような具合の悪さがあるのだ。

このような、「大したことではないけれど実際にプレイしてみるとわかる不快感」は他にもあり、以下に列挙してみる。

・矢の照準が合わせにくい
・一つの会話シーンで話者が変わる度にその話者のアップに画面が切り替わる
・オブジェクトに働きかけるときの位置合わせが悪い
・会話シーンのセンテンスに無駄が多く、話がくどい
・発声者がどこにいるかわかりにくい
・イベントシーンを進めることをプレイヤーが意図的に保留している時にNPCが同じ台詞を反復する間隔が短く急かされる
・ファストトラベルや馬にコストがかかる

※上記で列挙した点について、以下のnoteに詳細を記述した。

いずれも些細な点だが、長時間プレイしていると間違いなく気になる所でもある。そして、長く遊ばれることを意図した大作ほどこういった細かい所まで完璧に仕上げて来るものだ。本作はその最後の磨き上げ(ポリッシュ)を怠った印象がある。

主役に魅力が足らない

これを言ってしまうと身も蓋も無いが、致命的だ。主人公アーロイとその物語に魅力が足らない。

魅力が全く無いわけではない。本作の主人公アーロイはトゥームレイダーシリーズのララ・クロフトのような「強い女性」であり、そんな彼女が旅を通じて自分や世界の謎を突き止めるストーリーは王道だ。

だが、それは十分では無い。表現技術が精巧になればなるほど、もっと愛を感じてしまう程の革新的な魅力を備えた主人公やその物語を求めてしまう。

たとえば、アーロイの髪形一つを取っても、もっとスタイリッシュな改善は出来なかっただろうか?「サザエさんのようだ」とのコメントを見たせいもあるが、笑ってしまう程に不格好である。服装や口調も妙に野暮ったい。本当にただの「狩りをする野生児」にしか見えず、わざわざ動かしたいと思えないのだ。

プレイヤーが放置しても幸せになりそうな主人公

本作の物語に今一つ感情移入できない大きな理由は「旅の結末が何であれ、この主人公なら勝手に幸せになるだろう」という印象が拭えないことである。

「困難に立ち向かう強い女性主人公」は、前述のララ・クロフトや映画「ターミネーター」のサラ・コナーなど、過去の作品で既に十分に魅力が発揮されており、やや食傷気味にもなっている所だ。しかも彼女たちは、本当に強いのかよくわからない所に魅力がある。一方、Horizon Down Dawnのアーロイは、疑いようもなく精神的に強いのだ。

ここはあえて、主人公を「とても狩りをするとは思えないほど華奢で上品な存在」として登場させ、それが理不尽にも機械との戦いに巻き込まれ、否応なしに成長する物語とする所ではなかっただろうか?本作はプレイヤーが自身の巧みな判断や操作で主人公の旅を成功させようと思わせる「引き」に欠けるのだ。

オープンワールドに必要な要素は揃っているが…

以上のようなマイナス点があり評価は下がってしまったが、それでも本作はコストをかけたオープンワールドの大作であり、多くのプレイヤーにとって平均以上の評価を確保するゲームだ。

おそらく、これが10年以上前に発売されたゲームなら、もっと驚くべき革新性を備えたゲームとしての印象を抱いただろう。しかし現在は、既に多くのオープンワールドゲームが製作され、そのいくつかは本作を凌ぐ高いゲーム性や没入感を提供するものになっている。十分にそれらの衝撃を受けたプレイヤーにとって、本作はオープンワールドを楽しむために必要な要素は一通り備えているが、あえてプレイを続ける魅力を感じない、そんな残念な作品として印象付けられた。

おお、お慈悲を…お恵みを…お立ち寄りの貴方…どうかこの私に…一滴の潤いを…