自称するボーダーライン

クライアントからプロフィール写真の選別を頼まれた。
カメラマンに依頼して撮影した写真を、カメラマンの良し悪しも含めて見て欲しいとのことだった。

ネットで、サラリーマンをやりながら副業でカメラマンをやっている人をみつけたらしい。
コロナ禍でカメラの仕事がなくなったので格安で撮影します。という書き込みに、プロフィール写真を新しくしようと思ってたので、ちょっと頼んでみようかなと、依頼したようだ。

その人が「ポートレートが得意です」と、実績として掲載してたのはいずれも女の子の写真で、ネットで素人モデルを集めて撮影会をやっているのを作品として掲載していた。
私もちょっとのぞいてみたが、どこかで見たことがあるような、良くある素人撮影会のポートレートが並んでいた。

ちょっとお澄まし顔の女の子が画面の真ん中にいて、風景をちょっとぼかしたような、なんの面白みもない、額縁に飾るだけの写真。

クライアントはこの時点で、「大丈夫かな?」と不安になったようだが、コロナで困ってるなら人助けしようかと依頼に踏み切った。


待ち合わせをして、いざ撮影となったが、どうにも手際が悪い。
何枚かテスト撮影したが、どうにもイメージ通りの写真にならない。

それもそのはずで、クライアントが求めていたのはプロフィール写真でありながら、ブログのトップ画面や記事中写真、Youtubeのサムネ、SNSへの投稿など、文字情報とセットになったり、画面の中に文字を入れ込んだりする、素材としての写真だった。

タイトルを入れ込めるように、画面の上部を大きく空けたり、人物を端に寄せて風景を見せたり、空を多めにしたりと、構図を決めるカメラマンのセンスが問われる。

真ん中にモデルを立たせて表情をメインに撮影するものとは根本的に違うので、撮影会しか経験してない人には難しい。


クライアントから、仕上がった写真を送ってもらったが、見るだけで疲れた。

600枚以上の画像データの中で、使えそうなのは100枚以下。
露出があってない、ピントが合ってない、人物の頭が切れている、構図が悪い、狙いもなく逆光になっている、顔に電柱の影がかぶってる・・・

クライアントにはちょっと厳しいことを言わなきゃいけない・・・


さて、これはカメラマンが悪いという話ではなく、クライアントの要望とカメラマンの技術が合わなかったというだけのこと。
事前にもっとすり合わせをすれば、こんな不幸は起きなかったと思う。

ここで私が疑問に思ったのは、カメラマン。

カメラマンという職種には、資格も認定も必要ない。
自称すれば、その時点からカメラマンになれる。

今回のカメラマンについては、実績として掲載していたポートレートを見る限り、わたしはカメラマンを名乗るレベルには達していないと判断した。
一眼レンズによるボケ足と画像のクリアさだけの、一眼カメラさえあれば誰でも撮れるような写真だったからだ。

サラリーマンをやりながら趣味で撮影会を開き、素人モデルに喜んでもらえてたまでなら良かった。

しかし、カメラマンを名乗って仕事を受けるなら、副業と言えある程度のレベルには達してないとダメだろう。

では、資格も認定も必要のない、自称でなれる職業の線引きはどこでするのか?

私は、売り上げかなと思う。

自称して仕事を請け負っても、クオリティが低ければリピートや紹介がなくなり仕事として立ち行かなくなる。

継続して売り上げがあるかどうか。

そこが自称のボーダーラインなのかなと、写真整理をしながら考えていた。

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