「まぼろしの推奨香木」を復活させて、限定販売いたします♩(Ⅱ) ―8月の推奨香木「仮銘 惜しむ心」
7月の第一弾「仮銘 風の移り香」は即日に完売となってしまい、ご希望下さる皆様に行き渡らない結果となり、誠に申し訳なく存じております。
分木が叶いました皆さまは、どうぞ様々な火加減で聞香を試みていただき、加熱の具合に応じて異なる印象を与えてくれる最上質のタイ産沈香の妙味をご堪能下さいませ。
さて8月は、「仮銘 惜しむ心」を分木いたします。
「仮銘 木間」・「仮銘 朧月夜」と共に、某藩の家老職の家柄から手付かずの一木で無銘のまま発見された香木です。
古木(明治時代以前に渡来していたと思われる香木)は全て同様ですが、自ら輸入した香木では無く産地が判明していませんので、木所の判定にはとても迷いました。
なにしろ香木としての品質が極端に高く、似たような例が極めて少ないこともあって、いわゆる「匂いの筋」を掴むことが困難だったのです。
適切な火加減を見つけるのにも苦労しました。
銀葉の表面温度を90℃弱に設定すると、立ち始めに杏仁(生薬の苦杏仁ではなく、菓子に用いる甜杏仁)を思わせる香気を放つことがあります。
この香気は、恐らくは五味に当てはまらない類の「気」ではないかと感じられます。
樹脂の密度が濃い故か、香気が落ち着くまでに時間が掛かります。
そして次第に明らかに感じられる「匂いの筋」が、沈香の佐曾羅に特有の「酸」にあるのでは?と気付かされます。
加熱される温度が変化するにつれて「甘」・「辛」・「鹹」なども感じられますし、少々ではありますが「苦」すらあるように思えます。
どの香木も、火加減を工夫して丹念に聞香すれば愉しい時間を過ごすことが出来ると思いますが、「仮銘 風の移り香」と同様に、「仮銘 惜しむ心」は別格と言えます。
通常は、聞香した際の印象に相応しいと思える和歌を探して仮銘を採らせていただきますが、この香木だけは「手放すのが惜しい」という心を仮銘にしました^^;
風さそふ花のゆくへは知らねども惜しむ心は身にとまりけり(西行法師)
なるべく多くの皆さまに行き渡るようにと心掛けますが、なにしろ残りが少ない故に数量が限られます点、どうぞご海容のほどお願い申し上げます。