聞香会特別会「名香七種を味わう」  開催のお知らせ♪

実は、昨年中に開催が叶わず残念に思っていた企画がありました。
それは、「名香七種を味わう」特別会です。
そもそも40周年記念感謝企画の一環として考えていたものの、実施を予定していた12月は、ご好評で参加できなかった方々が多かった「歴史的名香の香気を堪能する」特別会を追加開催することを決めたために、先送りにせざるを得なかったものです。

ところで…「銘香はすなわち名香か?」と問われれば、躊躇なく「銘香は必ずしも名香では無い」と答えることが出来ます。
所持した人物が「良い香木で、気に入ったから名前を付けよう」、或いは「他の香木と紛らわしくないように名前を付けよう」と考えて付銘したとしても、それが名香とは限らないのです。
また、名香と伝わる香木を入手したとして、それが真正なものか否かを判断することは、困難を極めます。
比較対象となる「本物」を、(ほとんどの場合)持っていないからです。

更には、複数の香木に共通する銘が付されたと思われる事例も、多く見受けられます(代表的な例が『蘭奢待』です)。
それから極端な場合、銘が記された香包の中身が全く別の香木と入れ替わっていると考えられる事例も数多くあります。

つまり、名香と言っても、大抵の場合は「真正なものかどうかは疑わしい」のが普通だと心得るべきだと思えます。

さて、「名香七種」に戻ります。
この「七種」とは、どうやら「六十一種」や「百二十種」・「二百種」などの名香と同様の呼称では無く、「たまたま同じ箱に納めようとした七種の香木」くらいの意味合いかと推察しています。
箱の造りはお粗末で、恐らく明治・大正・昭和あたりに所持していた人物が適当に用意して、記録をとどめた物と想像しています。
(或いは、時代の背景が、香木に対して鄭重な扱いを施すゆとりを与えなかったという可能性も考えられますが…)

樅製の箱(表)
蓋裏に貼られた覚え書き

手元の香銘録を調べてみましたが、歴史的な名香に相当するものか否か、確証はもちろん得られていません。
例えば『浮舩』は複数の例があり、香気の立ち方の記録(甘 辛)と照合すると後西院勅銘香、百二十種名香の可能性が考えられます。

文政五年に計量し直した記載があり、江戸時代以前に渡来していたと思えます
『浮舩』・『花紫』・『玉だれ』
『和哥の浦』・『松か根』・『としま』・『梅の林』

『玉だれ』(意味は「すだれの美称」)は上々伽羅とされていて、次のような証歌も備わっているようです(『香の本』参照)。
「夢さめてまたふきあけぬ玉だれのひまもとめても匂ふ梅が香」

『松が根』はもし勅銘香であれば木所は羅国の筈ですが、入っているのは、恐らく黄熟香です。全く別種の『松が根』なのか、中身が入れ替わっているのか…
『梅の林』に関しては香銘録に香銘以外の記載が無く、詳細は全く不明で、木所の特定もまだ出来ていない状態です。

いずれも謎めいて興味津津の香木たちですが、共通して申し上げられるのは、「いかにも古木の風情・風格を感じさせる」ということです。
真正か否か、真偽のほどは判断できなくても、香木の「顔」を見て香気を聞いてみれば、古い時代に渡来した香木たちに共通して具わっている何かを、感じ取って戴けると期待しています。

肩ひじ張らない聞香会の機会に、ぜひ古木の味わいを堪能して戴きたく、特別会にお誘い申し上げます。

なお、或る程度の分量が残っている『浮舩』・『玉だれ』・『松が根』・『梅の林』の四種につきましては、可能な限りの数量で「聞香会セット」を
用意する予定でおりますので、どうぞお手許に置いてお愉しみ下さいますよう、お奨め申し上げます。


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