5月の推奨香木『仮銘 いづる日』(伽羅)について
これまでの推奨香木は、まず初めに候補となる香木の存在があり、次にその香木を分木させていただくに際して整理番号代わりの仮銘を付する必要があるという理由から、香木の雰囲気や香気に相応しいと思える和歌を探して参りました。
今回は、以前に『仮銘 にごらぬ波』が紫油か黒油か外見からは判別し辛かったことに触れた際に並べて写真を撮影した2本の黒油伽羅のうち、どちらかを推奨したいと検討していました。
その結果、木目が素直で截香しやすく無駄も少ないと思える方を選びました。以前に写真を公開していますが色が上手に表れていなかったため、新たに自然光のもとで撮り直してみました。
端っこを挽き落とした様子は、写真(下)の通りです。
樹脂分の流動性が一般的な緑油系よりも低く、堅いタイプの黒油です。
香気の特徴を言葉に表すと、『仮銘 にごらぬ波』に似てしまいます。
上品な甘味が香木の品位の高さを感じさせますし、しつこさのない苦味や辛味との調和のとれた立ち方が、とても好ましいのです。
仮銘は、時勢に鑑みて、敢えて年が改まる立春の心を詠んだ和歌から採らせていただきました。
他人との密接な接触を可能な限り避けて「うつらない、うつさない」ことを徹底し、理不尽極まりない事態の一日も早い終息を実現したいと願います。
いづる日に春のひかりはあらはれて年たちかへるあまのかぐ山
(後村上院御製)(新葉集)
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