香木アワー#6 爪・笹から推奨香木を♫
香木業界では、輸入する沈香の塊を形態別に分類する際に、「爪」や「笹」という呼称を用いて来ました。
塊の大きさに一定の基準は設けられていないのですが、意味合いとしては、文字通り「爪のような小片」とか「笹のような薄っぺらい小片」を指します。
これら爪・笹は小さい塊で綺麗な一炷分の寸法に截香することが困難な場合が多いという理由からか、香道に用いることは避けられて来ました。
ところが、昭和の時代、今から数十年以上の昔に輸入された爪・笹には、極めて上質な香気を放つものが少なくありません。
2月に入ってから念願の香木整理をようやく始めることが出来ており、その際に、‟昔ながらの” ドロ沈香やシャム沈香やタニ沈香の小片が色々と見つかっています。
例えば…
これは上質なドロ沈香の典型的な一例です。
全体の大半は厚さ2~3㎜が高密度に樹脂化を遂げており、内部は樹脂化しなかった為に朽ちてしまい、空洞になっています。
前回の香木アワーの際に、下部を挽き落としてみました。
この辺りは全体的に樹脂化して空洞にはならず、加熱してみると、極めて上質な羅国であることがわかります。
ただ、空洞の内側には、朽ち果てた沈香樹の組織が1㎜程度残っています。
写真上部の朽ちた箇所を、削り落としてみました。
これだけ削ると、その下に、完璧に樹脂化した部分が顔を見せてくれます。
この朽ち果てた部分の実体には、二通りが考えられます。
一つは、一旦は完璧に樹脂化を遂げたにも拘らず、その後に何らかの理由によって永年に亘って水分の浸食を受けた挙句に、朽ちた場合。
もう一つは、もともと樹脂化の密度がゼロかゼロに等しく、経年劣化により朽ち果てた場合です。
後者の場合、朽ち果てた部分は加熱しても「樹木の匂い」しか感じられませんが、前者の場合には、朽ちてはいるけれど羅国の香気が感じられる筈です。
せっかくの香木アワーですから、実際に加熱してみました。
結果は、前者の場合であることが確認できました。
とは言え、朽ちた部分と朽ちていない部分とでは明らかに違いがありますから、仮に推奨香木として分木する場合には、きれいに掃除してしまうか、或いはそのまま残しておくか、ご希望者のご意向を確認せねばならないかな?と思案しています。
次回の香木アワーでは、シャム沈香の例(写真下)も試してみようと考えています。
余談ですが例のバラン君がすっかり人気者になっており、顔も見せて!とのリクエストを頂戴しています。
本人は極めて無口ですからお母様にお伺いを立てたところ、顔出しの許可を頂戴しました♪
入り口のマットがお気に入りで動こうとしないバラン君が、お客様がお帰りの際にドアを開けられて「何か問題でも?」と小首をかしげるショットと、
店の奥に何があるのか気になってチェックに向かう際のショットです。