2月の推奨香木:徳用版シリーズNo.5「最上ドロ沈香爪」=最上質の羅国♪
香道に用いられる香木は、六種類に分類されます。
分類は流派の御家元・御宗家のお仕事であり、その基準は一般的に「六国」と呼ばれますが、内容は流派に属するもので、従って流派によって異なっても不思議ではありません。
その「六国」が、香木の産地を表わすものであるとする通説がありますが、実際には、六国の分類は必ずしも六種類の産地と呼応するものではありません。
存じ上げる限りでは伽羅・羅国はベトナムに産し(例外が皆無ではありませんが)、真那賀・真南蛮はタイ、佐曾羅・寸門陀羅はインドネシアに産出します。
つまり、分類は六種類ですが産出地は「三国」です。
(御家流の場合、佐曾羅にインド産白檀を用い、寸門陀羅にはインドネシアに産出する黄熟香を用いられることが多いと見受けられます)
京都の実家では、それら三国から産出する沈香を、独特の名前で区別して呼んでいました。
インドネシア(主にボルネオ島カリマンタン)のものはタニ沈香、タイのものはシャム沈香、そしてベトナムのものはドロ沈香という具合です。
京都に居た数十年前には、まだ最上質の香木が豊富に採集され、輸入されていましたが、状況は知らず知らずのうちに変わり続け、当時のレベルの香木が産地の何処からも見つけられなくなってから既に20年を超える歳月が経ってしまっています。
このところ隔月ペースで紹介している徳用版シリーズの沈香は、輸入年月日は特定できませんが数十年前には京都に在ったものばかりで、形状はともかく品質は最上の超稀少品です。
これまでシャム沈香、タニ沈香のいずれも「シズミ」クラスをお奨めして参りましたが、今回はいよいよドロ沈香(ベトナム産)の出番となりました。
いずれも「ちゃんとした羅国!」です。
一部を並べてみます。
いずれも「いかにも羅国」と言える「顔」をしています。
塊の内部に空洞があり、周囲が朽ちている例が多く見られるのは、ドロ沈香の特徴の一つと言えます。
樹脂化を遂げてから何らかの要因で水分により浸食されたものと思われ、朽ちた部分も加熱すれば羅国らしい香気を出すことが多いのですが、より純粋に香気を味わうのであれば、根気が必要ではありますが、頑張って掃除して戴ければと思います。
(掃除の方法につきましては、近いうちに動画を撮影してお目にかけたいと考えていますので、しばらくお待ちくださいませ。)
※※※2021/02/05追記※※※
掃除の方法について撮影した動画およびその解説noteを公開しました。よろしければご覧くださいませ。
空洞になった部分から樹脂分が滲出した形跡が残るものも、多く見られます。
截香(せっこう=聞香に適するように挽いたり割ったりして調えること)は大変な作業ですが、慣れると楽しいですし、香木に対する理解を深めるのにも役立ちますので、ぜひチャレンジしてお愉しみ下さいませ。
既に仮銘を付して推奨済みの羅国のうち『仮銘 ふるき梢』を除く三種(『仮銘 雪間の草』、『仮銘 花と月』、『仮銘 春吹風』)は、いずれも木所の特徴を表わす「匂いの筋」を捉え易いタイプと言えるかと思います。
(下の写真は『仮銘 春吹風』の断面です)
今回の「最上ドロ沈香爪」は、小ぶりの一木ながら、どれも古木の羅国ならではの味わいを愉しませてくれる逸品ぞろいです。
仮銘付きの三種と聞き比べていただければ、「羅国らしさ」がどのようなものか、ご理解いただけると思います。
適度に加熱された最上質の羅国から解き放たれる香気の豊かさ、奥深さを、ぜひご堪能下さいますよう、推奨いたします。