2月の推奨香木は、古木の真那賀♩

いにしえの香人が残した真那賀についての言葉に、「はやく香がう(失)せるを上品とす」というような表現があります。

はやく香が失せる=樹脂分が少ない=樹脂化を遂げた歳月が短い〝未熟品“…と捉えがちですが、霊元院の勅銘香『雲間』を改めてつぶさに観察するうちに、もう少し別の角度から真那賀という木所を考えるようになりました。

霊元院勅銘香『雲間』(側面)
『雲間』木口(鋸での切断面)

つまり、真那賀と言う木所に〝期待される香気の立ち方“ があって、それを敢えて言葉で表わしてみると「仄かであって、しかし特有の曲(くせ)を具えおり、その曲とは、甘味に含まれる艶やかな味わいである」と言うことになるのでは?との推測です。

そして、仄かでありながら好ましい香気を放つには、元の植物(沈香樹=ジンチョウゲ科アキラリア属)の樹脂化しなかった組織が高い割合で残されているとしても、それらの「単なる木の匂い」が香気の邪魔をしないことが重要になります。

これまでの推奨香木、例えば「仮銘 雲ゐの花」、「仮銘 のどけき峰」など何れも特有の曲を「匂いの筋」として具えていると自負していますが、今回の推奨香木は、加えて一味違う特徴を持っています。
樹脂化の密度の感じが、『雲間』と少し似ているのです。
すなわち、沈香樹の篩管(樹脂分を送る管状の組織)のうち、樹脂分が詰まっている割合がまばらにしか存在しません。
そして「加熱しても、樹脂化しなかった組織の匂いが雑味として感じられず、すなわち真那賀としての香気を邪魔しない」というところも『雲間』と似ています。

来たる25日の聞香会~古木を聞く~に炷き出す香木の一つとして選びましたが、皆さまに分木させて戴けるほどの大きさがあるため、推奨香木としても案内することに決めた次第です。

2月の推奨香木「仮銘 夢路」

仄かな中にも「辛」、「鹹少々」、「苦少々」それに特有の曲を感じさせる「甘」を穏やかに放ってくれる古木の趣を、どうぞお愉しみ下さいませ。

次の和歌から「仮銘 夢路」と付させて戴きました。
思ひつつぬれば見し世にかへるなり夢路やいつも昔なるらん     
                   (長慶院御製)(新葉和歌集)


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