山田とメルヘン 。
山田マチと申します。
ひょんなことから、児童書や絵本のお仕事をするようになりました。
といっても、絵はからっきしなので、おはなしを書くのみ。
児童書「山田県立山田小学校」はシリーズで8巻でています。
日本の48番目の県、山田県の山田小学校まわりで巻き起こるいろいろなおはなし。
校庭の百葉箱に小さなおじさんが住み込みで働いていたり、卒業まで姿を見せることのない忍者のクラスメイトがいたり、こどもたちの力で恐竜ヤマダノドンを追い払ったり、山田文明の謎を解き明かしたりします。
ほかに5歳くらいのこどもにむけた絵本も何冊か。
ここのところ、月刊誌や新聞連載などはちょこちょことやらせていただいていたものの、ほかごとにかまけて、こども向けの創作にはがっつり向き合っていませんでした。
組織の大人たちにもみくちゃにされたり、コンピューターをぴこぴこしたりしているうちに、私の脳内はすっかり現実世界におかされ、カチカチコチコチの、つまんねえ大人になっちまいました。
メルヘンがたりない。
メルヘンがほしい。
メルヘンをとりもどしたい。
とはいえ、もともと、そもそも、私はメルヘンな乙女だったわけではありません。
生まれ育った山田家は、両親が自宅横の工場で休みなく働き、祖父母が畑を耕し、曽祖母が伝統工芸の仕事をしていました。
家訓は「働かざるもの食うべからず」。
お姫様にあこがれたことはなく、人形やぬいぐるみのたぐいに感情移入したことも、妖精さんに話しかけられたこともありません。
「うちは仏教だから」ということでクリスマスもとくに何も起こらず、サンタさんは信じる信じない以前の問題でした。
そんな超現実的で夢見ることのない少女が、中学生時代に「コント」が好きになります。
高校に入ると、ひょんなことから、自分でコントをつくるようになりました。
大人になり、ひょんなことから、コントの仕事に携わりました。
コント脳の延長線上でみじかい物語をいくつか書いたら、ひょんなことから『山田商店街』という短編集を出版することができました。
そのなかのメルヘン要素に目をつけてくださった編集者さんからお声がかかり、こどもの本を書くことになった、というのが、これまでのひょんです。
私の奥底に秘められていたメルヘン。
そのメルヘンのともしびが、消えようとしている。
いまいちど、メルヘンに立ちかえろう。
私は「メルヘン」という言葉の意味を、辞書で調べてみました。
………なぬ。
メルヘンは、すなわち、コント。
私は学生のころから、ずっとメルヘンやってました。
ひょん多いなぁと思ってましたが、意外と一貫してました、人生。
しかし、よごれちまった今のわたしは、空前のメルヘン不足にみまわれています。
メルヘンを吸収し、メルヘンを補い、メルヘンを生産せねば。
山田、メルヘン修行、はじめます。