【モジャ毛語り①】古着屋巡ってます感出すヤツらvsあの日のヒロミチ
【たなか胡桃からのお題「古着」】
“古着屋巡り”
オシャレでこだわり強い系のジャンルのバンドマンの公式プロフィールの“hobby”の欄に必ずと言っていいほど書かれている文言。
数年前にシーンを席巻したシティポップ系バンドのブームの時なんて、
バンド名よりも先に
「古着屋巡りが好きな俺たちオシャレ若者同士で結成」
と書きたそうなオシャレバンドマンたちが巷に溢れていた。
他人の趣味にケチをつける筋合いは無い。
何ならヤマダヒロミチだって、古着屋巡りがキライなわけじゃない。
“hobby”に書くほどではないものの、
ヒマな時間に何となく古着屋に入っていそいそと漁り回ることもある。
好みの服装が古着よりももうちょっとボロ切れ寄りの素材中心なので、回数自体はそう多くないものの、
気に入ったものを見つけたら買うことだって全然ある。
だが、
そんなボロ切れ系のヤマダより一味も億味もオシャレに生きる彼らは、
インタビューで結成のキッカケを聞かれ、平然とこう答えるのだ。
「もともと同じ地元のツレで。高校の時から古着屋とか巡って遊んでて、自然な流れでバンドでもやろっか、ってなって(笑)」
この受け答えを読んだところで、
別に何の違和感を感じない方も多いだろう。
古着屋はR-18じゃない。
だが、
この一文だけで、
ヤマダヒロミチは彼らに強烈ないけ好かなさを覚えてしまう。
彼らに何の非も無いことはわかっている。
悪いのは俺だ。
そのいけ好かなさの正体は、
彼らが地元のツレとオシャレに古着屋巡ってた年頃の時に、
まだ母親が買ってきた英字プリントTシャツを着て生きていた、
高校生のヤマダヒロミチなのだ。
10代のヤマダヒロミチが、
むせ返るような中高一貫男子校でむさ苦しく学生生活を送り、
放課後はエロ本を立ち読みし、
地元のTSUTAYAに寄り、
帰宅すれば「信長の野望」の天下統一に精を出し、
友人と集まったと思えば“横浜屈指のパンチラスポット”の前で2時間ずっと中腰で過ごしていたあの時代に、
センスの良い洋楽の流れる裏路地の古着屋で、
仲間や店員の兄ちゃんと気さくに談笑しながら、
自分でバイトした金で、
自分の感覚に合う服を、
自分で選び、
自分で買う、
彼ら。
思春期としての完成度の埋まりようの無い格差に、
お母さんが買ってくる服にしか存在しないフォントで書かれた“Love Forever”の文字を胸に掲げ、
何の感性も研ぎ澄まさず生きていたあの日のヤマダヒロミチが、
強烈な劣等感を抱いているのだ。
オシャレすぎるだろう。
そんな高校生活、オシャレすぎるだろう!!!!
俺の高校にそんなヤツいなかったぞ!!
何だお前ら!!
古着屋なんて巡ってたらシコる時間無くなっちゃうでしょうが!!
高校生なのに不健康だぞバカ!!
ガラケーのハズレばっかのエロサイトで落としたクソ画質アイコラでティッシュ1箱食い潰せ!!!
パケット料金使い過ぎて親に怒られろ!!!
そんなイケてない思春期の申し子ヤマダヒロミチも、
さすがに大学生になると自分で服を買い始め、
それはそれは絶望的な紆余曲折を経た末に、
自分の着たい服や好きなファッションにたどり着いた。
「ボロ切れのようだ」とイジられることも多いが、
自分が好きな服を自分で選び自分で買っているのだから何の問題もない。
ただ、
今でもタンスを開けると、
いるのだ。
ダサ英字Tシャツたちの残党が。
実家を出る時に、
「ポンコツの俺がこまめに洗濯なんて出来るわけない!」
と思ったポンコツの俺が、
実家の部屋の部屋着としてすら既に3軍だった彼らすらも、
寝間着用にとテキトーに掴んで持ってきてしまったからだ。
それにより、
モジャモジャのおじさんは今でもたまに、
三省堂「NEW CROWN」から抜き出したような英文に包まれて寝ていたりする。
英字Tシャツ側も、
まさか本当に“Love Forever”な勢いで着続けられるとは思っていなかっただろう。
ただ、
この暮らしももうすぐ3年、
“ヤマダヒロミチは意外とこまめに洗濯機を回すタイプ”だということも自分でわかってきたので、
ここらで一度、断捨離をしたいと思っている。
さらば、“Love Forever”。
そこでなのだが、
このダサダサ英字プリントTシャツも、
古着屋は引き取ってくれるのだろうか?
古着屋で買い物をしたことはあるが、
古着屋に服を売ったことは一度も無いのだ。
どういうシステムになってるのか全然わからん。
値段なんか二束三文でも、
何ならつかなくたってかまわない。
捨てたらただのゴミになってしまう布だが、
もし古着として再び流通すれば、
あの日のヤマダヒロミチと同じような
イケてない少年(のお母さん)がそれを手に取り、
15年以上後に、
そのTシャツをテーマにした文章をネットに書き上げる、かもしれない。
それこそが、
真の“Love Forever”なのではないだろうか。
違うね。
うん、次の古紙古布の日に捨てまーす。はーい。
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