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【モジャ毛語り 14】ラスボスだってそうなんだからみんな弱くてみんな良い

【とーたくからのお題:「アゴ」】









ゲームのボスキャラ。




シューティング系でもアクションものでもRPGでも、


それまでの道中でプレイヤーが蹴散らしてきたザコどもとは一線を画す強さを誇る強敵であることがほとんどだ。





たいていの場合、



手当たり次第がむしゃらに攻撃をするだけでは勝てないのが相場。



めちゃくちゃ硬い鎧や装甲、バリアなどを纏っていて、

その上から剣で斬ってもビームを打ち込んでも全て無効化されてしまう。








弱点を、




ボスごとに決められた弱点を見つけ、




そこを的確に突いて倒すのが古今東西のゲームのセオリーだ。









ヤマダヒロミチも、
小さな頃から沢山のゲームをプレイしてきた。



幼少期、
どんくさくてトロくてボーっとしたガキンチョであったヤマダヒロミチを見て、


「何か一つくらい得意なことが無ければ学校でイジメられてしまうんじゃないか」


と心配したヤマダパパミチとママミチは、

どんくさくてトロくてボーっとしたガキンチョに積極的にゲームを買い与えてくれた。





そのおかげでヤマダヒロミチは、

どんくさくてトロくてボーっとしてる上にゲームも大して上手くないしそこまで詳しいわけでもないオジサンとして、

今日まで奇跡的にぎりぎりイジメられることなく生き抜いてきた。





どんくさくてトロくてボーっとした、
現実世界ではどう考えてもイジメられる側のガキンチョも、


ゲームの世界ではこれまで沢山の凶暴なボスたちと戦い、
これを打ち倒してきた。







装甲の中から時々顔を出す大きな目玉にタックルするとダメージを与えられるぞッ!


バリアを一瞬解いた時に赤く光る額のツノを狙って弓矢の集中攻撃だッ!


全身がダイヤモンドで出来ていて弱点なんて無さそうに見えるけど、たまに大きく開ける口の中に爆弾を放り込んでやれッ!








その度に、




ずっと思っていた。








ボスさん、






何でそんな親切に弱点を見せちゃうの?、と。






だってそうだ。



硬い装甲に守られたまま一方的に攻撃していればいいのに、
なぜわざわざ柔らかい目玉を時々出すんだ。


バリアはずっと張り続けられずツノ見えちゃうのわかってんだから、
ツノ周りだけあらかじめ鉄板とかで覆っておけ。


口開けんな。マスクしろ。






そうすれば、

どんくさくてトロくてボーっとしたガキンチョの操る主人公なんぞに屈せず、

悪の限りを尽くせたものを。








わかってる。


ゲームだもの。


むしろ弱点をひた隠しにされたらガキンチョたちにはわかんなくて泣いちゃう。




でも、


完全無欠な存在であるはずのラスボスの大魔王が、

無防備な急所を“ここ狙ってください”とばかりに曝け出す様子は、


何だかとても不自然でご都合主義的に思えた。









時は流れ、







中学生になったヤマダヒロミチは、

当時テレビで人気絶頂だったK-1の試合を観ることに夢中になった。



2m近いムキムキマッチョの外人格闘家同士が、

棍棒のような腕や脚を振り回してガチンコでぶつかり合い、
相手をハデにノックアウトする様子に、


どんくさくてトロくてボーっとした少年の奥底に僅かに眠っていたらしい戦闘民族の血が歓喜した。






その時にふと気づいた。






鋼のような筋肉に覆われた屈強なファイターたちでも、




ガードの隙間からアゴを打ち抜かれると、


糸の切れた操り人形のように倒れてしまうのだ。




本気の殴り合いのケンカなどしたことのないひ弱なヤマダヒロミチは経験したことがなかったが、



どうやら人間は、


アゴに衝撃が加わると脳が揺れて立っていられなくなるらしい。









そうなのか、




知らなかった。






知らなかったけど、




人間も弱点めっちゃわかりやすいじゃん。






アゴって明らかに、

“そこ殴りやすいようにちょっと突き出したデザインにしておきました”感が出てるじゃん。




俺がタコ型の宇宙人で、

地球人という謎の存在に初めて遭遇して闘わなきゃいけないシチュエーションだったとしても、

まず狙うもんねアゴ。


すごく弱点っぽいもの。
あからさまに連結部分だもの。







ダメだろう神さま。





そんなわかりやすく設計したら、
脳みそ揺らしたい放題じゃないか神さま。



もうちょっと何とか出来なかったのか。

もう少し控えめに、殴りづらいフォルムにするべきじゃなかったのか。







考えてみれば、


おちんちんだって、
もうあんなの見るからに弱点だ。


1面のボス並みにわかりやすい弱点だ。


何かもっと、
せめて普段は鉄板に覆われてるとかに出来なかったのか。






「私、乳首が弱点なの・・・」だなんて事前に申告してくれる女の子は最っ高にどエロくてもうホント最高だけど、



乳首なんてもはや的のかたちをしちゃってるじゃないか。
弱点に決まってるだろあんな部位。


何かもっと、
せめて普段は鉄板に覆われてるとかに出来なかったのか。








そうなのだ。





結局、



弱点ってのは得てして、
“一番弱点っぽいところ”がそうなのだ。




仮にそれを覆い隠したところで、


“そのめっちゃ覆われてるところが弱点っぽいわ!”と気付かれるに決まっているのだ。







そして、




だから守るのだ。




K-1を始めとした格闘技では、
ガードや回避の技術を磨いてアゴを守り、
いかに脳を揺らされないかを追求する。



おちんちんや乳首は下着と服で普段は見えないようになっている。



しかし、
そこが弱点である事実は守ろうと隠そうと変わらない。


ふとした瞬間にそこを突かれてしまう時だってある。




当時のK-1ヘビー級に、

若くてかっこよくてめちゃくちゃ強いけどとんでもない問題児で、
他の選手をdisったり場外乱闘したりする“リアル悪童”な、バダ・ハリというファイターがいた。

ビッグマウスに違わぬ憎たらしいほどの強さで、
それまでの人気選手を次々となぎ倒していった。


そんな彼も、ものすごくアゴが弱かった。


アゴを狙われると、
明らかに格下の選手のラッキーパンチですら失神KOしてしまうほどバダ・ハリのアゴは脆かった。


でも、

「あんなめちゃくちゃ強くて悪いバダ・ハリにも克服出来ない弱点ってあるんだ」


そのことに気づいた時、

試合前の煽りVTRでソファーにふんぞりかえって「オレ様こそが世界最強だ!!」なんてセリフを吐くリアルアウトローに、

急激に人間味を感じた。


どんなにイケイケで相手を挑発してても、

心の片隅では
「アゴ殴られたらイヤだなー、俺アゴ弱いからなー、アゴだけは守んなきゃなー」とか思ってるのかなと思うと、

目付きの超悪い巨大なモロッコ人が急に愛おしく思えた。



完璧じゃないからこそいいんじゃないか。

守らなきゃいけない弱みが見える方がステキじゃないか。





攻略法のない無敵のボスなんかより、





付けいる隙のある方がずっと魅力的。








そうは思わないかい??







さぁ、


恥ずかしがらないで、


みんな弱点を曝け出して生きていこう。



弱点の数だけ、
人はそれをカバーしようと頑張れる。

弱点があればあるほど、
人はステキになれるんだ。



ほら、


見てご覧よ。




ヤマダヒロミチなんて、



頭の先から爪の先そして内面に至るまで全てが弱点みたいなものだから、



そりゃあもう、めちゃくちゃステキでしょ??





え???





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