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Photo by
noriyukikawanaka
【プロット】ウイルスに感染した諜報員が、スキー場に
「げほっ
ごほっ」
スキー場に来た佐々木は、冷気に咳込んだ。
スキー板とストック、ウエアはレンタルである。
発熱して足元がふらつくが、違和感なく振舞わなくてはならない。
ポケットに忍ばせていた写真をもう一度取り出す。
「どうやら、ビンゴだな」
10メートルほど先に、50代の男が立っていた。
人混みに紛れてスキーを楽しんでいるように見えるが、少々違和感があった。
諜報員、つまりスパイとして企業に潜伏していたが会社でも、通勤途中でさえも隙がない男だ。
だが流石にスキー場まで来れば気が緩むだろう。
リフトで頂上まで登る男を尾行していく。
あまり慣れていないのか、何度か転びそうになる男を追い越してスキーを横に向ける。
白い煙と化した雪が頭の上まで舞い上がった。
「部長!
青山部長ですよね」
ゴーグルを頭の上にずり上げ、目を三日月のように反らせて満面の笑みを作る。
熱で赤みがある顔が、スキー焼けのように見えた。
「おお、佐々木君か。
奇遇だねぇ」
今日のところは挨拶だけでいい。
まさかスキー場で仕事の話もないだろう。
偶然を装うと、対人関係の距離を詰めることができる。
会社で会ったときにスキーの話をすれば、1つ2つ企業秘密の手がかりを聞き出せる可能性が高いのだ。
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