【極ショート小説】あの日の出逢い メガネ初恋
木目調の板の上に並べられた私。
隣の人は、まったく喋らないし堂々としてスポットライトを浴びている。
ダークグレーのスーツで身を固めたあの人が来た。
「これにしようかな」
手を伸ばしたのは煌めくカッパーゴールドの細渕の人。
私は線が太いし、黒縁で野暮なカーブを描く。
根強いファンはいるものの、イロモノ感が拭えない。
「イメージが大分違いますが、こちらもお試しください」
店員さんが私をつまみ上げた。
鼓動が早鉦のように脈打つ。
あの人は私を優しく手の平で受け取った。
「ああ、暖かい……」
何かが私の中に溢れてきて、ふんわりとした感触に満たされる。
テンプルを力強く広げられ、鼻当てにあの人の吐息がかかった。
もう、為すがままになってしまう。
「いいね。
好きだなあ」
体中が熱くなってしまった。
「幸せ……」
度はいくつなのだろう。
乱視は。
毎日使ってくれるかな。
あの人のことなら何でも知りたい……
連れ帰ってもらう日が待ち遠しい……
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