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7/19に単行本が3冊刊行されます

ご無沙汰しております、山田しいたです。

7/19に単行本が3冊刊行されます(※詳細は文末に記します)。
本項はそのひとつ『万能会社員菅田くん』という作品の2巻の話をします。

Web系のIT企業につとめる技術営業技術者の話です。
会社はIaaSなどのクラウドサービスが主力事業ですが、面白さ優先で適当です。というか『わいはそういうとこ勤めてるけど全然違うやん』と思う方は取材させてください。

2巻は幕末の話から始まりますが、独立した話で本編とあまり関係ないです。海底ケーブルの話を描きたくてこうなりました。

話を考えた経緯など余談として話させてください。

シンゴジラみたいな虚構VS現実、みたいな話をいつかやってみたい…と思っていました。Web系のIT企業につとめる技術営業技術者がなんとか頑張る話で普通の障害対応だと机に座って終わってしまう可能性も高く、ハードウェアを物理的に 壊す・阻止する・直す 話でないと漫画的に間が持たずしんどいです。

そんなわけで、島国だから海底ケーブルが断線したら日本はインターネットが止まるんじゃなかろうか……と思いそういう話を描きたくて調べ始めました。人為的だとややこしいのもあり、海獣が壊すことを早々に決める。
「クラウド事業社関係なくない?」と思いきやGAFA(M)のGもFもAも独自の海底ケーブルを持ってるから設備を守るために何とかするのは動機として成り立つはず。

しかし、2011年の東日本大震災でも完全には断線せず、しかも半年未満でインフラ技術者の方が復旧させてくださったようです。当時の社会的な不安感などを思い出したら目頭が熱くなりました。

当時の破損状況を同ページから引用いたします。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210309/k10012904451000.html  より引用

当時も今も千葉付近にケーブルは打ち上げられることが多いようです。しかしあれから10年以上たった今だと、接続先が増えて冗長性がかなり大きくなってます。

https://www.submarinecablemap.com/  より引用

何が言いたいかというと太平洋などに海獣が突如現れて大規模に破壊したとしても通信の迂回路があるから(混雑による回線の利用制限はあるかもしれないけど)日本中巻き込んだ大規模な障害にならないんじゃないか?という点でした。

専用の直通線なら何とかなるかもしれないと思い、日本全体の影響より特定の顧客(層)が困り解決に乗り出す話に切り替えようと思いました。
海外との専用の直通回線が必要になりそうなのは、通信速度を重視する ゲーム業界・金融取引業界・映像業界 などがあります。というか速度などの理由がないとまだ割合は少ないとはいえ衛星通信の迂回路がある。
ただこれも一か所の経路が壊れても地球の右回りと左回りで冗長性を確保する方法などがあるようですが、プロット上はトラブルが併発することにしよう…と思いました。

余談だけどこういう技術的工夫は感動してしまうしKDDIがどんどん好きになっていった。auの会社だと思っていたんだけど、国際(K)電信(D)電話(D)の略で前身は戦前にあった伝統的な企業だとこの頃知りました。IはDDIと合併したので別の略称、前身は日本電信電話公社。調べてみたら多摩センターに博物館があるので取材にお邪魔してきました。

さて、この時点で話の前振りがえらい長くなるなあ…と思っていたのですが粗い穴あきネームを切ってみると60Pぐらいになってしまい、どうにもよろしくない。前段の説明が長く主人公が傍観者でいる時間が半分ぐらいあった。その辺は改稿を繰り返して…とは思ったのですがさらに国際政治というか地政学的なことも考えねばならなくなりました。

内陸側の隣国と対立している半島国は、有事の際に内陸側の回線を遮断されて海底ケーブル経由の通信に頼ることになる可能性があり、日本が完全に断線しても日本だけの問題にとどまらず、日本を経由してインターネットにつなぐ国が有事になるかもしれない、という言説を見てそこまでは説得力ある着地点を出せる気がしないが…となります。
さらによく考えたら公海で破壊が起きたら、どこが対応するんだ?と思いますますわからなくなってきました。軍事的なことは公に回答しないかもしれないし。

そのあたりで限界を感じ始めて、別の話を考えました。wikipedia の海底ケーブルの項目、読んでるだけで内容が濃くて面白いんですが、歴史的に敷設が意外と早く19世紀中ごろ(この辺は漫画の冒頭に記述)、日本では歴史から逆算すると江戸末期のころだったとか。

KDDI博物館でも明治時代の日本の電信について触れられていて印象に残っていたのもあり、その話を描くことにしました。32Pのプロットに2-3か月かかってしまった。

という読切が掲載されている、万能会社員菅田くんの2巻が7/19に発売されますので何卒お手に取っていただければ幸いです。

時代劇はそれしかなくて、ふだんは現代劇です。1巻の1話試し読みもここに貼らせていただきます。


7/19にはあと2冊単行本が出るのですが、noteやcakesにも掲載されていた『ITおじさん』というショートショートIT企業漫画です。電子の同人版は出ていましたが商業誌版として紙・電子を新たに出してもらいます。内容は同人版とほぼ同じですがおまけ漫画が10Pぐらいずつあります。こちらもどうぞよしなに。



それではまた。

山田しいた拝

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山田しいた
お菓子(糖質補給)、書籍(情報収集)、ホッカイロ(血流改善)、など制作する際によく購入するものに使わせていただくと思います。